満月の存在。
『何。』


翔「……行こう。」



ついた先は理科準備室。
いつもの場所。

授業が始まった廊下は静かで寂しい。

前を見ると、申し訳なさそうに、翔が私を見ていた。


翔「……ほんとにごめん。
あんなことになるなんて思ってなくて……っ。
考えたら分かるはずなのに……っ」


その仕草からは、本当にそう思っているように聞こえる。


『別に、気にしてない。』


嘘だよ。気づいて。

潰されそうなんだよ。


そんな声は、全部押し殺して。

翔「でもっあの時物凄く悲しそうな顔をしてた。…悲しませてしまったのは俺だから。」

『元々、こんな薄気味悪くて顔も見せないような奴じゃ、仕方ないよ。

私が翔の仮の彼女だからって、あんなに啖呵切らなくても良かったのに。』


迷惑かけてるの、こっちな気がして。
いや、気じゃなくてきっとそうなんだろうけど。


翔「仮の彼女でも、俺の彼女には変わりないでしょ?」

……なんか、この人ダメだ。
優しすぎると思う……。

『優しいね。』

私なら、そんな事しない。


翔「そんなこと……」

プルルルルッ

携帯を見ると
",ピエロ"
と書かれていた。

『……ちょっとごめん。』

部屋を出て私の声と姿が見えないように膜を張って電話に出た。

……なんだろう。

『何。』

ピエロ「朝早くからすまないな。
緊急事例を出す。
月の悪魔、お前は満月寮に行って、子供たちの様子を見てきてくれ。

最近子供たちの様子がおかしいと院長から連絡があった。
数名の子供たちが姿を消しているようだ。
なんらかの事情に巻き込まれている可能性は高い。今すぐ向かってくれ。」


……まさか。
こんな早くから吸血鬼が?
…………抜け出しただけかもしれない。


いや、そんなことは、ありえない。

『御意。』

ガチャンッ

翔「あ、かのん、誰だっ『急ぎの用事が出来たから今日は帰る。
じゃあね。』
えっ?!」

返事を待つ余裕も無く、私はすぐさま部屋を飛び出し転移した。

目の前に現れたのは昨日となんら変わらない満月寮。

制服だった姿から私は満月最高位の象徴である黒いフードに黒いミニスカート、黒いタイツ、黒いブーツを履いて現れた。
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