満月の存在。
ピエロが消えた途端、目の前に人がいることに気づいた。

?「お前、生きてんの?」

『誰。』

薄汚れた服を着た、1人の男。
体は痩せていて目の前の同じような鉄格子の向こうにいる。


?「お前、ここがどこか知ってんのか?」

『病院か何か?』

そういうと、男は顔を歪ませた。

?「あのピエロってやつ、精密検査が必要だって言ってたけど、そんなんじゃないぜ。

ここは隔離施設だ。
俺らの感情を無くすためのな。
お前もう無くしてんだろ。目が虚ろだ。」


『ふーん。』

へぇ、もうひとりの自分が言っていたのはこれだったんだ。

この人は、感情を無くしていない。
どういうこと?


?「あぁ、俺か?俺はまだだよ。順番待ち。1週間後にな。
お前優秀だもんな、見てたぜ、あのピエロに嫌味を言えるくらいには上だってことばっちりな。


何、お前どういうやつ?」


『……知らないんだ。
私は悪神トップ6名のうちの1人。』

?「……マジかよ。
俺は天神の雑魚だ。一応な。
一応言うけど、ここ、異力使えねぇからな。お偉い悪神さんには分かんねぇだろーけど。」

『お偉い、ねぇ。
ここいる時点で上もしたも関係ない。私達は存在することさえ許されないのだから。』



?「……は?お前な、偉いさんは扱いが違うんだぞ?分かってんの?何度でも上に上がれる。俺なんてもう死ぬからな。」


『私だって、使えなくなったら潰される。……ふーん、理解した。
これが満月の闇ね。』

馬鹿馬鹿しい。自分に嘘つくのも面倒くさくなってきた。

はじめっから感情なんてあるし。
あー……冷たい。
なんてね。あったかいあったかい。
異力だってここ使えるし。

ここまずどこ。どうやったら出れるんだろ。
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