満月の存在。
そういったモテ男の顔は作り笑顔で優しそうに微笑んでいる。

私が人間ごときと?
……でもまぁ、なにか変わるかもしれない。

そういえばここの人間と話すのは初めてかな。



『……別にいいけど?』


?「ほんとに?!嬉しいなぁっ!」

そういった男は本当に嬉しそうに微笑んでいる。

……こんなに感情を表に出す生き物は人間だけ。
こんな表情が自分に向けられるのか。

そう思うと、新鮮味が湧いてきた。



?「えーっとね、とりあえず、俺の名前は知ってるよね?」


ソファに向い合せで座ると、そんな声が降りてきた。

……そういやこの人身長高いなぁ。
私が160。
この人180はあるんじゃない?

?「えっと……聞いてる?」

……話してる最中だったことすっかり忘れてた。

『顔は知ってるけど、名前は知らない。』

そういうと驚いたような顔をした。
……は?
人間ごときに興味無いの、当たり前でしょ。

冷ややかな視線を向けるとさらに動揺する男。



面白いかもしれない。

面白いという感情も忘れてしまったけれど、こういう感情があった気がする。

?「あ、いや、俺結構女の子たちに取り囲まれてるでしょ?だから皆知ってるんだよね、俺のこと。

でもかのんちゃんみたいに知らない子は初めてだったから驚いたんだ。
気を悪くしたらごめんね?」


ふーん。
初めてねぇ。
常に知らない人間から浴びる視線……感じたくないな、考えただけで身震いする。

?「俺は同じクラスの五十嵐 翔。
よろしくね?

うーん、自己紹介なぁ……。」


目の前で頭を悩ませる五十嵐翔。


何をするでもなく、本当に私と話すだけみたい。
……変な人。

翔「うーん。
ニックネームは王子。
得意教科はねー……って、興味無いか。

じゃ、俺から質問してもいい?」

『……いいけど。』

翔「どうして教室に来てもすぐに出てっちゃうの?」

『暇だから。』

翔「勉強得意なんだ?
じゃー、どうしてフード被ってるの?夏にも見たよ、暑くない?」

……素性がバレると色々と面倒くさいし。
……殺し屋やってることバレちゃやばいよねぇ。

『…関係ない。』


翔「ふーん。
ねぇかのんちゃん、俺の女避けになってくれない?」
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