Dear Hero
ファーストコンタクト
「———ということで、今日は早く帰って明日は遅刻のないように。解散!」

担任の声と同時に鳴り響く終業のチャイムと共に、騒がしくなる教室。
「また明日ね」「帰りドラッグストア寄ってこ」なんて会話や、机と椅子が動く音で賑やかなのは日常の事。
いつもよりちょっとみんなが浮足立っているのは、明日がオリエンテーション合宿だからだ。

高校2年の春、中間テストも終わってそれぞれ仲良しグループなんてのが固まってきた頃。
クラスの皆と親睦を深めよう!なんて目的の1泊2日の合宿を明日に控えて、そわそわしているのは俺らも同じ。



「なぁ、女子の風呂、覗けると思う?」

学校からの帰り道、やたらキリッとした顔で問いかけるのは森 哲平。
中学生の時からの友達。

「ちっさいけどホテルでしょ?無理じゃね?」
「むしろその邪念をやめて」

さすがにそんな勇気はないわーと苦笑いで返せば、ピシャリと一刀両断するのは十和田 孝介。

「ちなみに、男子と女子は部屋が違う棟になってるから部屋に呼ぶとか言語道断だからね」

次のヨコシマな考えを口に出す前に釘を刺された哲ちゃんは、ちぇーと口を尖らせるものの諦めた様子で。
優等生で学級委員も務める孝介には、テストの度にお世話になってるので逆らわない方が身のためと悟ったのかも。


中学で同じクラスになり、気が合ってそのまま同じ高校に進んだ哲ちゃん。
ちょっとオープンエロだけど、男子高校生としては健全な範囲だと思う。
赤みの強い茶色で染められた短髪が、今日もワックスでツンツンにセットされている。
見た目は派手だけど、人情に厚く周りを常に楽しませてくれるムードメーカーって所。
…実は高校デビューというのは内緒。

孝介とは、仲良くなったのは高校入ってからだけど、真面目なのに意外と気さくで面倒見のいい所が気に入っていつもつるんでる。
180cm近い身長とサラサラの黒髪+黒ぶち眼鏡という、いかにも優等生みたいなイメージと同じく非常に優秀で。
他校に年下の彼女がいるだとか、容姿だとか言動だとか、色々持ってるものが俺達より少し大人に感じさせられる。

それと、俺。
見た目も身長も成績も、全部中の中。
特技も褒められる点も何もなく、ただただ普通の平均的な男子高校生。
……しいていえば、この年になっても未だに特撮ヒーローに憧れてるってくらい。


そんな3人で。
問題児もウルサイ奴もいないし、学校中のアイドルみたいな有名な奴もいない、いい意味でも悪い意味でも平凡クラスで

毎日のようにバカやって、
くだらない事で笑いあって、
その日が楽しければそれでいい

そんな日常を送るんだと思ってた。



—————あいつに出会うまでは。
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