Dear Hero
「文化祭無事に終了お疲れさま!アーンド2冠達成おめでとう!それじゃ、かんぱーーーい!!」

始まりと同じく、哲ちゃんの音頭で始まったのは、クラスの打ち上げ。
模擬店の売り上げは、クラス全員に還元しようという話だったのだけど、賞金が出た事と、「残りは俺が出してやるよ」という太っ腹な担任の一声で打ち上げをすることになり、クラスのほとんどの生徒が、現在カラオケボックスに集合しているのである。

それぞれ、手にしたフリードリンクのグラスを合わせ、「乾杯」と色んな所で聞こえてくる。

「澤北くん」

鈴のような声が聞こえて振り向くと、人ごみにもみくちゃになりながらグラス片手に近づいてくる水嶋。

「水嶋。お疲れさん」
「お疲れ様でした」

グラスをカチッと合わせると、楽しそうに笑った。

「水嶋さん、お疲れ様。実行委員ありがとう」
「水嶋、お疲れー!お前大変だったなー」

孝介、哲ちゃんも続くと水嶋も「十和田くんも森くんも、お疲れ様でした」と嬉しそうに乾杯する。


「—————」

水嶋が何かを言いかけたところで、誰かが入れた大音量の曲が流れ始めて何も聞こえなくなってしまった。

「え、何?聞こえな…」

顔を近づけてもう一度聞こうとすると「依ちゃん!みんなで写真撮ろー!」と女子に引っ張られて、連れて行かれてしまう。

「ごめ……さ…のちほ……」


何を言おうとしたのかは気になるけど、楽しそうに女子たちと写真を撮る水嶋を見て、まぁいいかと思った。



「大護。文化祭、楽しかったよ。いい思い出ができた。お前たちが頑張ってくれたおかげだな」
「俺も!文化祭なんてかったりぃと思ってたけど、楽しかった」
「……やめろよ、マジ顔で言うの。くそ恥ずいじゃん」
「わざと言ってんだよ」
「…おい!」

孝介、哲ちゃんにまでそんな事言われちゃ、自然と口元がにやけてしまう。

「お前、いろいろあったみたいだしな」と哲ちゃんに思い切り背中を叩かれて、俺は「?」を出すしかない。あと、地味に痛ぇ。


その後も、次々とクラスメイトが「ありがとう」「楽しかった」「いい思い出ができた」と伝えに来てくれて、実行委員、やってよかったなぁと噛みしめていた。
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