Dear Hero
哲ちゃんの誕生日、どうしようかと話していたところ、その週末に哲ちゃんの家族が外出するからうち来なよ、との誘いを受けておじゃまする事になった。
適当にジュースやケータリングでも持ち寄って騒ごうという事になり、哲ちゃんが「水嶋も呼べば?」と言ってくれたので、本人に伝えたらキラキラと目を輝かしながら、「お料理、いっぱい持っていきましょう!」とルンルンしながら前日から台所に籠っていたっけ。


そして当日、孝介と手分けして買い物をして、2Lのペットボトル3本とフライドチキンのセット、水嶋はお手製の料理をたくさん詰め込んで、哲ちゃんの家に足を踏み入れた。
玄関に、孝介の靴の他に見た事あるような靴を見つけて、不思議に思いながらも部屋に入って、俺は驚いてペットボトルの袋を自分の足に落下させた。

「……え、紺野!?」
「へへへー。今日はご一緒させてもらいまーす」

ニコニコと手を振る紺野の姿を、俺は涙目で足をさすりながらぱちくりと見ていた。

「あ、水嶋さんもこんにちは!今日も仲良くしてくださーい」
「こ、こんにちは!こちらこそお願いします!」

なんて、いつぞやと同じような挨拶をする2人。



「よーし。じゃあ本日は俺の誕生日を祝いに来てくれてありがとう!たんと食えよ!かんぱーーーい!!」

各々、プラスチックコップのジュースを揺らして乾杯した。
盛り上げ隊長は自分の誕生日も盛り上げる。
たんと食えなんて、まるで自分が振舞っているかのように言っちゃうのが哲ちゃんらしい。


フライドチキンセットの他に、孝介が頼んでおいてくれたピザやローストビーフ、それに水嶋が作ってきたポテトサラダやマリネ、プチコロッケやグラタンなどがテーブルいっぱいに広がる。
特に、ガッツリ系が多い中で水嶋のサッパリしたサラダは大人気で、哲ちゃんたちはともかく、紺野までが「これが…女子力……」などと呟きながら頬張っていた。
俺が何かしたわけでもないのに、自慢気な気分になった。
隣同士になった女子たちも打ち解けたようで、楽しげな水嶋の姿にほっとする。


哲ちゃんが見たいと言っていた映画のDVDを借りてきたので、無駄にバカでかいテレビで観賞したり、プレゼント(というかの面白グッズ)をあげたり、テレビゲームでガチバトルが始まったりと、なんちゃってパーティーも終盤に差し掛かった頃、哲ちゃんがコホンとわざとらしく咳払いをした。
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