Dear Hero
「えーっと…みなさんにご報告が」
「…?」

俺と水嶋はごくりと唾を飲み込んで次の言葉を待つ。

「俺たち、付き合う事になりました」

そう言って指さすのは、自身と…紺野。
隣にいる紺野は、ちょっと気まずそうに笑った。


「は……!?」

反射的に起こした体がテーブルにぶつかって、倒れたジュースがこぼれた。
慌てて拭いてくれる水嶋。


「は?え?いつから!?」
「一昨日。誕生日の日に」
「え?ちょ…うそん…え、孝介も知ってたの?」
「哲平が紺野さん好きだったのは知ってたよ。ようやく結ばれたかって感じ。おめでとう。哲平、紺野さん」
「うそ!え、哲ちゃんそうなの!?」
「孝介ありがとなー!つーかそうだよばーか!大護に言えるわけないだろ」
「うっそ……」


衝撃的すぎた。
哲ちゃんが紺野の事好きだったのも、紺野がそれに応えたのも。
だって紺野が俺に告白してから1ヶ月も経ってないのに。
振ったのは俺なのに、なんだか振られたような気分になった。

水嶋はキラキラした顔で紺野に「おめでとうございます…!お二人、とってもお似合いです!」と祝福していた。
俺が紺野に告白された事は、水嶋には言って…ない。


立ち上がった紺野は、ぽかんと座り込む俺の腕をとって引きずると、少しみんなから離れた所で耳打ちする。

「ダイくんの事だから、もう関係ないかもしれないけど、私の名誉のために言うよ。文化祭の日、ダイくんに振られたからってすぐにダイくんに近しいテツくんになびいたわけじゃないからね!あの後、テツくんが何度もアプローチしてくれて、すごく一生懸命に想ってくれたから応えたいって思っただけ。だから振ったダイくんがそんな顔しないでよね」

それだけ伝えると、紺野は部屋を出て行った。


続くように、哲ちゃんが俺に近づくとスリーパーホールドを決める。

「ぐえっ…ちょ…」
「飛鳥がお前に振られたって言ったから、俺は長年の気持ち伝えたんだぞ。あいつが振られるまでずっとお前の事好きなの知ってたからな。今はそんな風に見れないなんて言われたけど、諦めずに何度も伝え続けて、それでようやく気持ちが伝わったんだ。だから…今の中途半端なお前見てるとちょっと腹立つ」
「……」
「飛鳥は俺が幸せにする。だから、大護は水嶋を全力で幸せにしてやれ」
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