Dear Hero
***
冬休みに入るとあっという間だった。
最後の追い込みでできるだけバイトを詰め込んだ。
大掃除をしなくてはという水嶋のマンションに、空いた時間に手伝いに行き、帰ってきたら自分の家の大掃除に駆り出され、引越し3件を3日連続こなして今年の用事は全て終わらせた。
「じゃあ、行ってくるわ。戸締りに気をつけて、留守番よろしくね」
「言っとくけど、1時間に1回のペースで電話入れるからね。変な気起こすんじゃないわよ」
「ああもう!わかったからさっさと行けよ!」
「兄ちゃん、ちょっと」
颯希に手招きされて顔を近づけると、こそっと耳打ちされる。
「私は別にもう何でもやっちゃっていいと思うけどさ、後始末だけはちゃんとしてね。ティッシュの山とか見たくないから」
「ば…っ!お前どこでそんな事覚えてくんだよ!」
「教室で」
「お前にはまだ早い!とっとと行け!」
31日の午後、半ば追い出す形で家族を見送った。
「行ってしまいましたね」
「やっと静かになるよ」
二人だけになった家の中はいつもより静かで、広く感じる。
水嶋がマグカップにホットココアを淹れてきてくれた。
お揃いのマグカップに、それぞれマシュマロが2つずつのっている。
夏に行ったカフェでそうやって出していて、気に入った水嶋は家でも同じようにして出してくれるようになった。
隣に座って、ふうふうと冷ましながらスプーンでマシュマロを咥える水嶋。
柔らかそうな唇の中にマシュマロが消えていく姿に、ごくりと喉が鳴った。
マシュマロの柔らかさは唇と同じって聞いた事がある。
俺もスプーンですくって唇に当ててみる。
ぷにっと弾力があって柔らかい。
水嶋のそれを想像してしまい、急いでかき消す。
隣を見ると、マグカップを両手に持って「美味しいですか?」と微笑む水嶋。
「………っ!」
無理……!
俺、今日我慢できる自信ない。
これから3日間、水嶋と二人きりなんだ。
つらい。
冬休みに入るとあっという間だった。
最後の追い込みでできるだけバイトを詰め込んだ。
大掃除をしなくてはという水嶋のマンションに、空いた時間に手伝いに行き、帰ってきたら自分の家の大掃除に駆り出され、引越し3件を3日連続こなして今年の用事は全て終わらせた。
「じゃあ、行ってくるわ。戸締りに気をつけて、留守番よろしくね」
「言っとくけど、1時間に1回のペースで電話入れるからね。変な気起こすんじゃないわよ」
「ああもう!わかったからさっさと行けよ!」
「兄ちゃん、ちょっと」
颯希に手招きされて顔を近づけると、こそっと耳打ちされる。
「私は別にもう何でもやっちゃっていいと思うけどさ、後始末だけはちゃんとしてね。ティッシュの山とか見たくないから」
「ば…っ!お前どこでそんな事覚えてくんだよ!」
「教室で」
「お前にはまだ早い!とっとと行け!」
31日の午後、半ば追い出す形で家族を見送った。
「行ってしまいましたね」
「やっと静かになるよ」
二人だけになった家の中はいつもより静かで、広く感じる。
水嶋がマグカップにホットココアを淹れてきてくれた。
お揃いのマグカップに、それぞれマシュマロが2つずつのっている。
夏に行ったカフェでそうやって出していて、気に入った水嶋は家でも同じようにして出してくれるようになった。
隣に座って、ふうふうと冷ましながらスプーンでマシュマロを咥える水嶋。
柔らかそうな唇の中にマシュマロが消えていく姿に、ごくりと喉が鳴った。
マシュマロの柔らかさは唇と同じって聞いた事がある。
俺もスプーンですくって唇に当ててみる。
ぷにっと弾力があって柔らかい。
水嶋のそれを想像してしまい、急いでかき消す。
隣を見ると、マグカップを両手に持って「美味しいですか?」と微笑む水嶋。
「………っ!」
無理……!
俺、今日我慢できる自信ない。
これから3日間、水嶋と二人きりなんだ。
つらい。