Dear Hero
今年は紅組が優勝し、紙吹雪舞う賑やかなシーンから一変、除夜の鐘だけが鳴り響く静かな画面に変わる。
チャンネルを変えると、男性アイドルたちのライブ中継画面となり、再び賑やかさが戻った。

「お好きなんですか?」
「俺は別に好きじゃないけど、姉ちゃんが毎年見てるからなんとなくこれがうちの流れになってる」
「じゃあきっと、今頃美咲さんもお爺さまのおうちで見てますね」
「お前はこうゆうの興味ないの?」
「あまり見た事ないですね…みなさん同じ顔に見えてしまいます…」
「ぶはっ。母さんと同じ事言ってら」

恥ずかしそうにこちらを睨みつける。
おぉ、こんな表情もするようになったか。

「私からしたら、テレビの中でキラキラの衣装で着飾っている方よりも、澤北くんの方が何倍もかっこいいです」
「……」

笑い声が消えて、今度は俺が照れる番だった。
何万人もの女子をキャーキャー言わせてるアイドルよりもかっこいいだなんて、たとえお世辞であってもにやけない訳ないだろう。
しかもそれが水嶋が真顔で言う事ならなおさらだ。


「……あんまりそうゆう事言わないでくれる?」
「どうしてですか?」
「もれなく俺が浮かれるから」
「じゃあ、もっとたくさん言わなきゃですね」


……くそう。
なんだか最近、水嶋に翻弄されてる気がする。
水嶋は俺の取扱説明書でも持ってて、喜ぶポイントのページを暗記してるんじゃないだろうか。
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