Dear Hero
大音量で流れる、携帯の目覚ましアラーム。
動きが止まる。



……そうだ。今日は孝介たちと初詣行く約束があるんだった。


慌てて止めるも、一気に萎えてしまってため息を吐く。
力が抜けて水嶋の上に倒れ込んだ。


俺……どれだけ邪魔されるの?



「もう少し温まっていきな」と水嶋に毛布をかぶせると、ベッドから降りて土下座した。
「謝らないでください」と首を振られたが、驚かせてしまったのは事実だったから。
「トイレ行ってくる」とよろけるように部屋を出て、ドアの外で力が抜けてしゃがみ込む。


先ほどの感触を、また手が覚えている。
大きくて、柔らかかった。

はっと気づいていて、追い払うように頭を振る。


除夜の鐘は、俺の煩悩は追い払ってくれなかった。

額を抱えてもう一度大きくため息を吐く。



なんちゅう新年の始まりだよ……。
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