Dear Hero
ようやく目的地に到着。
大勢の人がごった返す入場券売り場に並ぼうとするので制し、某猫型ロボットのように財布からチケットを取り出すと「さすがジェントルマンですね」と喜んでくれた。
…水嶋よ、俺にとってのその褒め言葉は呪文なのである。
私の分、お支払いしますねと財布を取り出そうとするので、慌てて止めさせた。



冬になるとイルミネーションがキレイで人気のテーマパーク。
水嶋はこういうの好きそうだなと思ってここに選んだ。

「ここ、初めて?」
「初めてです…いつかは行きたいと憧れていた所だったんです…」
「よかった」
「澤北くんは?」
「俺は子供の時に家族と来て以来だな」
「じゃあ、澤北くんに案内してもらわなくちゃ」
「何年も前だぞ?覚えてねぇし…」

「ですよね」とくすくす笑う。



イルミネーションの他に、大規模な花畑も有名らしい。
冬にもかかわらず、色とりどりの花の絨毯が広がっているみたいで素直にキレイだなと思った。

「俺、勝手にお前は花好きってイメージ持ってる」
「何ですかそのイメージ。でもお花は大好きですよ」
「よく教室の花の世話してたもんな」
「あのお花は…マンションから学校への間にあるお花屋さんで、元気がなくなって売れなくなってしまったお花を店長さんからいただいていたんです。夏はすぐにお花が悪くなってしまうので、飾っていませんでしたけど。でも、お花を変えてたのが私だって、よくご存じでしたね」
「あー…お前の事、意識してたからなぁ」

ぽかんと俺を見上げる水嶋。
目が合うと、ぶわっと赤面する。

「え、なに」
「いえ、その…そんなにも前から澤北くんの頭の中に私がいたのかなと思ったら…嬉しくて…」


……何この女の子。
最高か?かわいすぎね?


繋いでいた手をアウターのポケットに勢いよく突っ込む。
その勢いで俺の方へ倒れ込む水嶋。



「……どうせ俺の頭ん中はお前の事でいっぱいだよ。テストで赤点ギリギリになるくらいにはな」
「それは手離しで喜べないですね」

俺にぴったりと寄り添うと、困った顔で笑った。
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