Dear Hero
「…一つだけ、お願いしてもいいですか?」
半分ほど廻ったところで、遠慮がちに水嶋が呟く。
「なに?」
ごそごそとリュックの中を漁り、取り出したのはデジカメ。
「想い出に、澤北くんとお写真が撮りたいです…」
文化祭の時にクラス全員で撮った事はあったけど、そういえば水嶋と二人で撮った事はなかったなと思い出す。
「撮ろっか」
デジカメを受け取ると、嬉しそうにはにかんだ。
近くにいたお姉さんに撮影を頼むと、快く引き受けてくれた。
「彼氏くん、顔硬いよ。彼女さん、もうちょっと寄って……いくよ、ハイチーズ」
デジカメの画面の中の俺たちは、自分で言うのもなんだけど、本当に幸せそうに笑っていた。
それからの水嶋は、全ての時間を愛おしむように様々な瞬間をシャッターに収めていく。
「これ、ウィンターコスモスって言うんですよ」と風に揺れる黄色い花を。
地元の牛肉を使用したという肉まんを頬張る俺を。
中の肉汁に舌を火傷して涙目になる俺を。
大丈夫か?と心配してくれたものの、「そんなに熱いんですか?」というので手渡したら、あまりの熱さに涙目になっているところは俺が激写してやった。
半分ほど廻ったところで、遠慮がちに水嶋が呟く。
「なに?」
ごそごそとリュックの中を漁り、取り出したのはデジカメ。
「想い出に、澤北くんとお写真が撮りたいです…」
文化祭の時にクラス全員で撮った事はあったけど、そういえば水嶋と二人で撮った事はなかったなと思い出す。
「撮ろっか」
デジカメを受け取ると、嬉しそうにはにかんだ。
近くにいたお姉さんに撮影を頼むと、快く引き受けてくれた。
「彼氏くん、顔硬いよ。彼女さん、もうちょっと寄って……いくよ、ハイチーズ」
デジカメの画面の中の俺たちは、自分で言うのもなんだけど、本当に幸せそうに笑っていた。
それからの水嶋は、全ての時間を愛おしむように様々な瞬間をシャッターに収めていく。
「これ、ウィンターコスモスって言うんですよ」と風に揺れる黄色い花を。
地元の牛肉を使用したという肉まんを頬張る俺を。
中の肉汁に舌を火傷して涙目になる俺を。
大丈夫か?と心配してくれたものの、「そんなに熱いんですか?」というので手渡したら、あまりの熱さに涙目になっているところは俺が激写してやった。