Dear Hero
窓の外に広がる夜景は、先ほどまで俺たちがいたテーマパーク。
そのイルミネーションが一望できる、そんな部屋だったから。


「すごい………綺麗……」
「気に入ってくれた?」


俺の方をチラリと見ると、何度もうんうんと頷いてはまた景色に釘付けになる。


この姿を見れただけでも、バイト頑張ってよかったって思えた。


「これが、一つ目のプレゼント」
「……?」

水嶋がこちらを向く前に、後ろから抱き締める。

重なる、時計の針。





「誕生日おめでとう、依」



「……っ」





後ろから声をかけたのは、声に出した名前に気恥ずかしくなる顔を見られたくなかったから。
夜景をバックに、ガラスのように反射する窓越しに映る涙を流す依の姿が見えたから、俺の姿も見えちゃってるんだろうな。



「お前、自分の誕生日忘れてたろ」
「……っ…」



「この夜景を、依と見たかったんだ」



依は、窓の方を見たまま泣きじゃくっている。
あまりにも泣き続けるもんだから、もしかして気に入らなかったのかなとか、どん引いたのかなとかだんだん不安になってくる。
身体を離して横から覗き込む。
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