Dear Hero
「あの…よ、依さん…?」
「……いそう…」
「え?」
「壊れ……ちゃいそう、です…」
「…え?壊れる!?どこが!?」
「こんな…素敵なプレゼントに、誕生日も、祝って…もらって…な、名前まで……」
「……」
「嬉しい事が、一気にありすぎて……胸がいっぱい……」
「……」
「……壊れちゃう…」
「……ぶはっ」


思わず噴き出してしまった。
よかった。失敗ではなかったみたいだ。


「喜んでもらえたなら何よりです」


親指で涙をぬぐった瞬間、俺の胸に飛び込む依。


「サプライズ、成功かな?」


力強く何度も頷くのがくすぐったい。
依の頭を撫でながら、「あー…俺も安心した…」なんて口から漏れてしまった。


「……す」
「え?なに?」
「最高の誕生日です。こんな幸せ、罰が当たりそう……」
「いいんじゃない?お前が幸せそうにしてると、俺も幸せだから」
「ありがとうございます、澤北くん」
「……」



俺は、なんて欲張りな人間なんだろう。
依の顎に指を添えると、そっと上を向かせる。
涙でぐちゃぐちゃな顔なのに、愛しくて仕方がない。


「…俺も、呼んでもらえると嬉しいんですけど」
「……!」


顔を発火させた後、少しだけ迷って心を決めたように大きく息を吐く。
両手を伸ばして俺の頬に添えると、顔を引き寄せ耳元で囁いた。


「大護くん」


全身に電気が走ったようにぞくぞくした。
依はそのまま俺の首に腕を回すと、「恥ずかしくてしんじゃいそうです…」と呟く。

「……大丈夫。俺も」

ぎゅっと抱き締めながら、俺も続いた。
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