Dear Hero
その夜は、不思議と下心は大人しくしていた。
依を喜ばせたかったはずなのに、図らずも俺自身も幸せな気持ちでいっぱいになって、それどころじゃなかったのかもしれない。
この先、今日以上のチャンスはもうないんだろうなと思ったけど、今はこの気持ちを大事にしたかった。
寝室に並ぶ、二組の布団。
「……今日はお前、そっちで寝ろよ」
「………」
「そんな不満そうな顔すんなよ。懲りないな、お前も……」
どうやら、俺は寝起きの手癖が悪いらしい。
正月の三日間、結局依が一人で眠る事はなかった。
一日目はご存じの通り。
二日目はパジャマのボタンを開けて胸に顔をうずめたらしい。
三日目はついに下半身に手を伸ばしたらしく、驚いた依に頭突きされて目が覚めた。
嫌じゃないと言われても、合意の上とは言っても、やっぱり申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
そして、どんどん自分の性癖が露見されていくようで居た堪れなかった。
「……わかったよ。寝る時だけだからな。朝起きたらお前避難しろよ。どうなっても知らないからな。俺、お代官様だからな」
「なんですか、それ」
くすくす笑いながらも嬉しそうに俺の布団に潜り込む依。
「……おやすみなさい、大護くん」
「おやすみ、依」
さらさらの前髪を掻き分け額にキスを落とすと、安心したように目を閉じ、ものの数秒で寝息を立て始める。
無茶なバイトの疲労が溜まっていたのと、サプライズが成功してほっとしたのもあって、あっという間に俺も眠りへ落ちていった。
その日の夢は、悪人みたいな顔した俺が「へっへっへ」と笑いながら浴衣の腰紐を引っ張り、「あーーーれーーー」とくるくる回る依の夢だった。
依を喜ばせたかったはずなのに、図らずも俺自身も幸せな気持ちでいっぱいになって、それどころじゃなかったのかもしれない。
この先、今日以上のチャンスはもうないんだろうなと思ったけど、今はこの気持ちを大事にしたかった。
寝室に並ぶ、二組の布団。
「……今日はお前、そっちで寝ろよ」
「………」
「そんな不満そうな顔すんなよ。懲りないな、お前も……」
どうやら、俺は寝起きの手癖が悪いらしい。
正月の三日間、結局依が一人で眠る事はなかった。
一日目はご存じの通り。
二日目はパジャマのボタンを開けて胸に顔をうずめたらしい。
三日目はついに下半身に手を伸ばしたらしく、驚いた依に頭突きされて目が覚めた。
嫌じゃないと言われても、合意の上とは言っても、やっぱり申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
そして、どんどん自分の性癖が露見されていくようで居た堪れなかった。
「……わかったよ。寝る時だけだからな。朝起きたらお前避難しろよ。どうなっても知らないからな。俺、お代官様だからな」
「なんですか、それ」
くすくす笑いながらも嬉しそうに俺の布団に潜り込む依。
「……おやすみなさい、大護くん」
「おやすみ、依」
さらさらの前髪を掻き分け額にキスを落とすと、安心したように目を閉じ、ものの数秒で寝息を立て始める。
無茶なバイトの疲労が溜まっていたのと、サプライズが成功してほっとしたのもあって、あっという間に俺も眠りへ落ちていった。
その日の夢は、悪人みたいな顔した俺が「へっへっへ」と笑いながら浴衣の腰紐を引っ張り、「あーーーれーーー」とくるくる回る依の夢だった。