Dear Hero
***


障子越しに朝の光が降り注ぐ。
柔らかいものに触れてふと目が覚める。
俺の腕の中で、すやすやと依が眠っていた。

いつも俺より早く起きるのに。
昨日あれだけはしゃいでいたから疲れたのかな。

その寝顔を見ていたらすっと眠気が引いて、今日は手を出す事なく起きれたようだ。

明るい所で寝顔を見るのは初めてだった。
まるで子供のようにあどけない寝顔。
ずっと見ていたくて、こっそり携帯で写真を撮ってやった。
静かな寝室にカシャッという音が思っていたよりも響いて驚いたけど、「ん…」とだけ声を漏らして寝返りを打つと、再びすうすうと寝息を立てた。


依を起こさないようにそっと布団を出ると、昨日渡しそびれたもう一つのプレゼントを手に戻る。
布団の外に出ている小さな手に静かに箱を置くと、隣の布団の上に横になってじっと眺める。
ただ眺めているだけなのに、いつまでたっても飽きないだろうなと思った。


ふわぁとあくびが出て、もう一度寝ようかなと思い始めた時にぱちっと依が目を覚ました。


「…え、澤北くん!?ごめんなさい、私寝すぎて…」
「いや?別に今日は俺が早く起きただけだよ」
「そうだったんですね……うわぁ、寝顔見られた…恥ずかしい…」
「よく言うよ。いつも俺より早く寝るくせに。つーかいつも俺の寝顔だって見てんだろ」
「夜は暗いからいいんです…だって、さわき…」

依の唇に親指を押し付けた。


「俺、また澤北くんに戻っちゃったの?」
「…!」

真っ赤な顔を布団の中に沈めながら、ぽつりと吐き出す。

「…大護くん」
「ひひっ。おはよう、依」


布団から目だけを出して、「おはようございます」と呟くと、手の上の物に気づく。
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