Dear Hero
ずっと探していた、パズルのピースがはまったような気持ちだった。
俺自身もずっと手にしていたのに、なかなかはめる事の出来なかったピース。


—————依が俺を“好きだ”と言ってくれた。


気持ちは通じ合っていると思っていた。
それなのに、この一言があるだけでこんなにも心が満ち足りるんだ。


「ごめんなさい……こんな事しか言えなくて…」
「……」
「大護くんは、いつも私を護ってくれて、満たしてくれる。私はいつもこんなに幸せなのに、何もしてあげられない」

ぼろぼろと溢れる涙が、依の顎をつたって俺の頬に雫を落とす。

「私も、もっと大護くんに返したい。大護くんを幸せにしたい」
「……っ」
「なのに…どうしたらいいのかわからないの…」
「………っ!」
「大好き……これしか言えなくてごめんなさ…あっ」



あぁ…。
せっかくの昨日からの我慢が台無しだ。
大好きな子にここまで言われて、平気な奴っているの?


腰を引き寄せると、そのまま布団に寝かせて俺の下に組み敷く。

ずっと溜まっていた気持ちが溢れ出ていくように、依は「好き…大好き…」と泣きじゃくりながら何度も繰り返す。


「…お前、俺が幸せじゃないなんて思ってんの?」
「だって…何もできてない……」
「俺、お前が隣にいるだけで幸せだよ。笑ってくれたらもっと幸せ。それ以上に何をくれるの?」
「……でも…」
「これ以上そんな事言われたら、俺のリミッターが外れるだけだ」
「……大護くん…」
「………ごめん、もう無理」




何かがプツンと切れる音がした。
< 155 / 323 >

この作品をシェア

pagetop