Dear Hero
次の日も依は来なかった。
朝のHRで担任が依の欠席を告げた事で、体調の心配をする声がちらほら聞こえたが、学校生活は何事もなく進んでいった。
学校に依はいないのに。
俺はこんなにも不安でいっぱいなのに。
依がいなくても世の中が回っていく事が不思議で仕方がなかった。
食欲がなくて、昨日の弁当は哲ちゃんにあげたら喜んで食べていたけど、今日は受け取ってもらえなかった。
「大護、お前ちゃんと飯食ってるのか?今日は俺は食わないからな」
「水嶋さんが心配なのもわかるけど、それで大護が弱ってたら戻ってきた時に水嶋さんが悲しむよ」
「………」
そっと弁当箱を開けると、俺の好物のハンバーグが入っていた。
最近の弁当は手抜きがちの母さんだったけど、今日のは俺の好きなものがいっぱい入ってる。
そういや、昨日の弁当にはこれまた好物の唐揚げが入ってたって哲ちゃんが言ってた。
夕飯もそんなに食べてなかったから、弁当こそはと思ったのかもしれない。
ハンバーグを一口食べたけど、粘土を食べてるみたいに全く味がしなかった。
半分くらい食べたところで、もう限界だった。
「ねぇ澤北」
次の日も教室に依はいなかった。
休み時間に俺に声をかけてきたのは、文化祭の打ち上げの時に依に写真を撮ろうと誘っていた女子だった。
依が嬉しそうに見せてくれたプリクラにも写っていた気がする。
「依ちゃん風邪?大丈夫なの?」
「……知らない」
「知らないって…だって澤北、依ちゃんと仲いいじゃん」
…あぁ、しつこいな。放っておいてくれ。
「仲良くても知らないもんは知らないよ」
「素っ気ないなぁ…心配じゃないの?依ちゃんの事」
うるさいうるさいうるさい。
心配じゃないわけねぇだろ。
「……るさいな…」
「え?なに?」
「だからうるせぇつってんだろ!あいつがどうしてるかなんて俺が知りてぇよ!」
「……っ」
「大護!」
今にも女子に掴み掛かりそうな俺を、慌てて孝介が羽交い絞めにする。
怒鳴られた事で、泣き出す女子。
その女子を護るように、グループの女子たちが囲う。
「ちょっと澤北!そんな大声出す事ないじゃん!」
「この子だって依ちゃんの事心配してるだけなのに」
「女子泣かすなんて最低!」
群れた途端に次々と攻撃し始める女子たち。
泣きたいのは、俺の方だよ…。
俺を取り押さえる孝介を振りほどくと、鞄を持って教室を飛び出した。
「大護!」と、もう一度俺を呼ぶ孝介の声が聞こえた気がした。
朝のHRで担任が依の欠席を告げた事で、体調の心配をする声がちらほら聞こえたが、学校生活は何事もなく進んでいった。
学校に依はいないのに。
俺はこんなにも不安でいっぱいなのに。
依がいなくても世の中が回っていく事が不思議で仕方がなかった。
食欲がなくて、昨日の弁当は哲ちゃんにあげたら喜んで食べていたけど、今日は受け取ってもらえなかった。
「大護、お前ちゃんと飯食ってるのか?今日は俺は食わないからな」
「水嶋さんが心配なのもわかるけど、それで大護が弱ってたら戻ってきた時に水嶋さんが悲しむよ」
「………」
そっと弁当箱を開けると、俺の好物のハンバーグが入っていた。
最近の弁当は手抜きがちの母さんだったけど、今日のは俺の好きなものがいっぱい入ってる。
そういや、昨日の弁当にはこれまた好物の唐揚げが入ってたって哲ちゃんが言ってた。
夕飯もそんなに食べてなかったから、弁当こそはと思ったのかもしれない。
ハンバーグを一口食べたけど、粘土を食べてるみたいに全く味がしなかった。
半分くらい食べたところで、もう限界だった。
「ねぇ澤北」
次の日も教室に依はいなかった。
休み時間に俺に声をかけてきたのは、文化祭の打ち上げの時に依に写真を撮ろうと誘っていた女子だった。
依が嬉しそうに見せてくれたプリクラにも写っていた気がする。
「依ちゃん風邪?大丈夫なの?」
「……知らない」
「知らないって…だって澤北、依ちゃんと仲いいじゃん」
…あぁ、しつこいな。放っておいてくれ。
「仲良くても知らないもんは知らないよ」
「素っ気ないなぁ…心配じゃないの?依ちゃんの事」
うるさいうるさいうるさい。
心配じゃないわけねぇだろ。
「……るさいな…」
「え?なに?」
「だからうるせぇつってんだろ!あいつがどうしてるかなんて俺が知りてぇよ!」
「……っ」
「大護!」
今にも女子に掴み掛かりそうな俺を、慌てて孝介が羽交い絞めにする。
怒鳴られた事で、泣き出す女子。
その女子を護るように、グループの女子たちが囲う。
「ちょっと澤北!そんな大声出す事ないじゃん!」
「この子だって依ちゃんの事心配してるだけなのに」
「女子泣かすなんて最低!」
群れた途端に次々と攻撃し始める女子たち。
泣きたいのは、俺の方だよ…。
俺を取り押さえる孝介を振りほどくと、鞄を持って教室を飛び出した。
「大護!」と、もう一度俺を呼ぶ孝介の声が聞こえた気がした。