Dear Hero
行かないで
依が学校に来なくなって2週間。
最初の頃は依の安否を気遣う声も聞いたけど、今では誰も依の話はしなくなった。


あれから、俺は毎日学校に来ている。
普通に授業を受けて、弁当食って、バイトもして。
ただただ幸せに過ごしてきた時と、まったく同じように過ごせているかと言われたら、YESとは言えないけれど。

あの騒ぎの次の日、教室に入って一番に泣かせてしまった女子に謝った。
「澤北も心配してないわけないよね、私もごめん…」と逆に俺も謝られてしまった。


14日には、依とバレンタインのチョコを一緒に作ろうと約束していた紺野が、結局一人で作ったという手作りのチョコケーキをくれた。

「わかってると思うけど、義理だからね」
「……義理じゃなかったら受け取らねぇし」
「とか言って、受け取ってくれちゃうのがダイくんだよね」
「ウルサイ。……でも、ありがと」


「依ちゃんにもあげたかったなぁ…。私、おうちまで行ってみようかな」という紺野を、慌てて引き留めた。
あの敵意は俺に向けられているんだと思っていても、女の子をあの異様な空間へ行かせてはいけないと思ったから。
依が帰ってきたら渡しておくよと言って、依の分も預かった。
きっともう、食べたらお腹壊しちゃうんだろうな。
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