Dear Hero
本当は、依の父親に会ったら「どうして依を一人にしたんだ」と文句を言うつもりだった。
あんたたちが依を一人にしなければ、もっと元気で明るくて楽しい人生を歩めたかもしれないのに。
依の人生を返せって。
そう言ってやるつもりだったのに。



目の前にいる依の父親は、過去を詫びてあまつさえ俺に頭を下げている。
謝られるべきは俺ではないのに。


「私の力では妻は止められない。樹くん、大護くん。頼む、依を救う力を貸してくれないだろうか」



……あぁ。
この人も俺と同じなんだ。

依を救い出したい。
なのに自分じゃ力が足りなくて一人ではどうする事も出来ない事を嘆いている。

……そんな風に言われてしまったら、文句なんて言えなくなってしまうのに。


「義兄さん。俺はもちろんだけど、大護くんは誰よりも依の身を案じてる。それに大護くんのご両親もたくさんの協力をしてくださってる。みんなで、依を助けよう—————」



そしてその3日後。
この騒ぎが終息へと向かっていく出来事が発生した。
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