Dear Hero
その日の俺は、いつもと同じように学校帰りにバイトへ行っていた。
依がいなくなって数日間は、バイトどころじゃなくて無断欠席してしまっていた。
引越し屋の件と言い、あまりにも迷惑をかけすぎたのでさすがにクビにされるかなと思ったけれど、店長からの厳重注意だけで済んでしまった。
とはいえ、失ってしまった信用は自分で取り戻すしかない。
“普段通りの生活を送る”ためにも、バイトは続けなければいけなかった。
22時に上がって着替えて店を後にする。
いつもは学校からチャリで直接来るのだけど、今朝は雨が降っていてバスで行ったから、店からは歩いて帰らないといけない。
学校が終わる頃には雨はやんでいたから、ビニール傘は学校に置いてきてしまった。
雨で濡れた事によって空気が冷やされたみたいに、白い息がキンとした寒さを際立てていた。
駅前にあるバイト先から帰る時は、いつも裏道を使っている。
大人の店が多いから、たとえ俺が男であっても母さんはこの道を使う事は好ましく思ってないみたい。
でも、大通りを使って帰るよりもショートカットできるから、こっそり使ってるのは母さんには内緒。
もちろん、昼の明るい時間の時でも依と歩く時はこの道を使う事はなかった。
依となら、どれだけ遠回りしてでも長い時間一緒にいたかったから。
少しでも冷気から守るようにマフラーをぎゅっと巻く。
ポケットに突っ込んだ右手に当たるのは携帯。
前は常に開いて、依からの連絡はないかとチェックしていたけど、最近は開く事すらしなくなって、たまに来ているメールに気づくのが遅れる事も多くなった。
左手のポケットには依のネックレス。
“御守り”とまではいかないけど、一番依を身近に感じられるものだったから、常に持ち歩くようになっていた。
夜の店らしいネオンがチカチカと煩くて、俯いて歩く。
こんな所で遊ぶような大人にはなりたくないなと思っていた。
「……りがとうございました。また、お待ちしていますね」
依がいなくなって数日間は、バイトどころじゃなくて無断欠席してしまっていた。
引越し屋の件と言い、あまりにも迷惑をかけすぎたのでさすがにクビにされるかなと思ったけれど、店長からの厳重注意だけで済んでしまった。
とはいえ、失ってしまった信用は自分で取り戻すしかない。
“普段通りの生活を送る”ためにも、バイトは続けなければいけなかった。
22時に上がって着替えて店を後にする。
いつもは学校からチャリで直接来るのだけど、今朝は雨が降っていてバスで行ったから、店からは歩いて帰らないといけない。
学校が終わる頃には雨はやんでいたから、ビニール傘は学校に置いてきてしまった。
雨で濡れた事によって空気が冷やされたみたいに、白い息がキンとした寒さを際立てていた。
駅前にあるバイト先から帰る時は、いつも裏道を使っている。
大人の店が多いから、たとえ俺が男であっても母さんはこの道を使う事は好ましく思ってないみたい。
でも、大通りを使って帰るよりもショートカットできるから、こっそり使ってるのは母さんには内緒。
もちろん、昼の明るい時間の時でも依と歩く時はこの道を使う事はなかった。
依となら、どれだけ遠回りしてでも長い時間一緒にいたかったから。
少しでも冷気から守るようにマフラーをぎゅっと巻く。
ポケットに突っ込んだ右手に当たるのは携帯。
前は常に開いて、依からの連絡はないかとチェックしていたけど、最近は開く事すらしなくなって、たまに来ているメールに気づくのが遅れる事も多くなった。
左手のポケットには依のネックレス。
“御守り”とまではいかないけど、一番依を身近に感じられるものだったから、常に持ち歩くようになっていた。
夜の店らしいネオンがチカチカと煩くて、俯いて歩く。
こんな所で遊ぶような大人にはなりたくないなと思っていた。
「……りがとうございました。また、お待ちしていますね」