Dear Hero
「……どうして」
「………」
「意味もなく…そんな事言われて、ハイそうですかなんて言えるかよ」
「………」
「俺の事が嫌いになったんだったらそう言って。それ以外の理由があるなら教えて」
「………」
「前も言ったじゃん…俺の頭ん中、依でいっぱいだって。理由もなくお前の事忘れられる訳ないだろ…」
俺の服を掴む手に、力が入る。
「………もう、これ以上大護くんに迷惑かけられません」
「だから…っ迷惑とか…」
「大護くんの隣にいるって言ったのに…私は簡単に約束を破りました」
「それは……」
「大護くんのご家族にも何も言わずに出てきました」
「事情が事情だろ…?」
「学校も、自分の仕事を放り投げてしまっています」
「それは、今までお前ががんばりすぎてたんだよ」
「こんな私は…もう誰にも必要としてもらえない」
「……っ!そんな事はない!」
「でも、ママは私が必要って言ってくれたんです。私さえいれば、何もいらないって。ママの言う通りにしていればずっと一緒にいてくれるって言ってくれたんです」
「だから…それは…」
「ずっと……ずっと…ママの帰りを待っていたの…やっと、帰ってきてくれたの。もう離れたくない。置いていかれたくない!」
「………」
「……って、思っているのに…大護くんとも離れたくないなんて、思っている私がいるんです…」
「………」
「大護くんのご家族とも、十和田くんや森くん、飛鳥ちゃんとも離れたくない。仲良くしてくれているクラスの皆さんとも離れたくない」
「………」
「でもそれは…全部を叶える事はできないってわかったから…」
「………」
「ママには私しかいないから。……だから私は、この家に戻ります」
—————ごめん依。
その願いは叶わない。
「……そんな理由で俺が納得すると思ってんのか」
背中を引き寄せ腕の中に閉じ込めると、服を掴んでいた手で俺を押し返し逃げようとする。
でも俺だって負けない。
離さない。離したくない。
「そんなの、俺がお前を忘れる理由になんてならないよ」
依を抱く手に力が入る。
「いっそ、嫌いって言ってくれた方が良かった」
「……」
「……どれだけの理由があっても、依の事忘れるなんて……無理」
腕の中で、ぐすっと鼻を啜る音がする。
「もう……どうしたらいいのかわからない……」
―――――ごめんな。
選択肢は一つ消えるんだって。
部屋の外でガチャリと玄関の開く音と共に、何人もの足音が聞こえる。
その音に反応し、顔を上げてドアを見つめる依。
「………」
「意味もなく…そんな事言われて、ハイそうですかなんて言えるかよ」
「………」
「俺の事が嫌いになったんだったらそう言って。それ以外の理由があるなら教えて」
「………」
「前も言ったじゃん…俺の頭ん中、依でいっぱいだって。理由もなくお前の事忘れられる訳ないだろ…」
俺の服を掴む手に、力が入る。
「………もう、これ以上大護くんに迷惑かけられません」
「だから…っ迷惑とか…」
「大護くんの隣にいるって言ったのに…私は簡単に約束を破りました」
「それは……」
「大護くんのご家族にも何も言わずに出てきました」
「事情が事情だろ…?」
「学校も、自分の仕事を放り投げてしまっています」
「それは、今までお前ががんばりすぎてたんだよ」
「こんな私は…もう誰にも必要としてもらえない」
「……っ!そんな事はない!」
「でも、ママは私が必要って言ってくれたんです。私さえいれば、何もいらないって。ママの言う通りにしていればずっと一緒にいてくれるって言ってくれたんです」
「だから…それは…」
「ずっと……ずっと…ママの帰りを待っていたの…やっと、帰ってきてくれたの。もう離れたくない。置いていかれたくない!」
「………」
「……って、思っているのに…大護くんとも離れたくないなんて、思っている私がいるんです…」
「………」
「大護くんのご家族とも、十和田くんや森くん、飛鳥ちゃんとも離れたくない。仲良くしてくれているクラスの皆さんとも離れたくない」
「………」
「でもそれは…全部を叶える事はできないってわかったから…」
「………」
「ママには私しかいないから。……だから私は、この家に戻ります」
—————ごめん依。
その願いは叶わない。
「……そんな理由で俺が納得すると思ってんのか」
背中を引き寄せ腕の中に閉じ込めると、服を掴んでいた手で俺を押し返し逃げようとする。
でも俺だって負けない。
離さない。離したくない。
「そんなの、俺がお前を忘れる理由になんてならないよ」
依を抱く手に力が入る。
「いっそ、嫌いって言ってくれた方が良かった」
「……」
「……どれだけの理由があっても、依の事忘れるなんて……無理」
腕の中で、ぐすっと鼻を啜る音がする。
「もう……どうしたらいいのかわからない……」
―――――ごめんな。
選択肢は一つ消えるんだって。
部屋の外でガチャリと玄関の開く音と共に、何人もの足音が聞こえる。
その音に反応し、顔を上げてドアを見つめる依。