Dear Hero
***


オリエンテーション当日。

学校から2つ3つ離れた町にあるその施設は、自然に囲まれて空気のキレイな所だった。
男女混合の班でレクリエーションしたり、バーベキューしたり。
女子が苦手なわけじゃないけど、得意でもないから自分から話しかける事はそうないし、こういう機会でもないとあの二人以外と話す事もそうないし。
初めてまともにしゃべったクラスメイトで、女子のみならず男子まで名前覚えてなかった事は内緒である。



「それじゃ、20時から各クラス順番に風呂だからな。休憩がてら順番回ってくるまでに協力してこの部屋片づけておけよー」

先程までホームルームを行っていたこの部屋は、大きな作業台や椅子が乱雑なまま。
ただ今の時刻は19時半。

「俺、先生に呼ばれてるから行ってくるけどサボらないように。あと風呂の順番来たら先に行ってて」

そう言って慌ただしく孝介は部屋を出て行った。
先生も学級委員もいないこの空間では、率先して動く奴なんていない。
女子は女子で「荷物取りにいこー」なんて言って早々に部屋に戻っちゃうし。
「下の階に卓球台あったぞ!行こうぜ!」なんて遊びに行っちゃう男子もいるし。

俺は俺で「大護、女子の風呂なんだけどな、ここの階のこの位置からだと若干見えるらしいのよ」という哲ちゃんのお誘いに
「孝介に言われたろ。俺、共犯になりたくないから行くなら哲ちゃん一人で行ってよ」なんてお断り。
ぶーたれる哲ちゃんからは諦めの色が見えないので「小便行ってこよっと」と逃げてきた。
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