Dear Hero
大護と初めて言葉を交わしたのは、中学2年の時だった。


最初の印象は、“寡黙なヤツ”。


休み時間は誰かと戯れるわけでもなく寝てるだけ。
でも、クラスのヤツに声かけられたら、ちゃんと答えはするから愛想がないわけでもないみたい。


必要以上に口を開かないその姿が、なんだか一匹狼みたいでちょっとカッコイイって思った。



きっかけは体育の授業だったかな。
二人組を作れって言われたんだけど、あいつ、自分から声かける事しないからあぶれそうで。
さりげなくフェードアウトしてどこかに行ってしまいそうな素振りをしていたから、慌てて捕まえた。


「澤北、どこ行くの?」
「……いや、なんか俺あぶれそうだしそのまま抜けようかと」
「じゃあ、俺と組もうぜ」
「………おう」


話してみたら、面白いヤツだった。

ストレッチの体勢が、子供の頃見ていたヒーロー番組の名乗りポーズに似ていて、そんな事をぽろっとこぼしたら、めちゃくちゃ食いついてくんの。
「アレ、かっこよかったよな!」ってキラキラした顔で言うんだよ。
「ヒーロー好きなの?」って聞いたら、「……男のロマンだろ」ってちょっと照れたように言う姿が何だかかわいかった。

それがきっかけで打ち解けて、つるむようになった。
イメージとは裏腹に、よく喋ってよく笑う、楽しいヤツ。
いつも一人でいたのは、自分から声をかけるのがめんどくさいだけだったらしい。
「ただの人見知りじゃん!」ってツッコんだら、「でも、森は声かけてくれただろ」なんて嬉しそうに笑ってた。

関わらなければそっぽ向いたままだけど、一度警戒心を解いたら懐いてくる。
狼じゃなくて、ただのワンコだった。
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