Dear Hero
10分ほど外で待っていたら、制服に着替えた大護が慌てて出てきた。


「哲ちゃんまじごめん!ガリガリ君おごる」
「今日はハーゲンダッツだな」
「………うっす」

しょぼくれる大護の後ろから、さっきの女子がぴょこんと顔を出す。

「……っ」

思わず固まる俺。


「あ、今日帰り紺野も一緒にいい?遅くなったから送ってく」
「え!?……お、おお、いいんじゃ…ないかな…?」
「男子空手部マネージャーの紺野飛鳥です。ダイくんには大丈夫だよって言ったんだけど……お邪魔しちゃうね」
「お……おう……」
「哲ちゃん。同じクラスで仲いいんだ」
「そうなんだ。ダイくんの扱い、大変でしょー?」
「う……うん……」
「なんだよ扱いって!哲ちゃんも“うん”じゃねぇし!」
「おう……」


笑った顔がかわいい子だなって思った。
元気いっぱいで、ヒマワリみたいな笑顔だった。


「……空手部もミーティングとかあるんだな」
「あるっつーか……なんか、3年が引退して副部長になったからその打合せ的な…」
「は!?大護が副部長!?人選いいの?それ」
「おいこら失敬だな!」
「そうなの、信じられないよねー」
「……っ!」
「でもね、これでもダイくん部内で一番強いんだよ。ただ……人望がないって言うか人格に難アリで仕方なくって言うか…」
「悪かったな!人望なくて!」

不意にこちらを覗かれて、思わず目を逸らしてしまう。
まずい。まともに顔見れねぇや。


…でも、意外だった。
あれだけ周りに興味のない大護がこんなに楽しそうに人と話してるなんて。
それも女の子だ。

大護は、女の子と話してて緊張とかしないのかな…。
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