Dear Hero
「大護!紺野!!」

俺の声に反応した大護が、顔を上げる。
口からも鼻からも血が出ている。
目の周りも赤黒くなっている。


「……っ哲ちゃん!紺野連れて逃げて!」

俺の姿を見つけた大護が、掠れた声で叫ぶ。
この状況、どう見たって一番危ないのは大護なのに。

でも、大護が求めているのは自分が助けられる事なんかじゃなくて、紺野を危険な目に遭わせない事なんだと思った。

「大護、お前は大丈夫なんだよな!?おい紺野!行くぞ!」
「いやだ…!お願い、もうやめて!ダイくん逃げて…!」

持っていたカバンを投げ捨て、腕を引くも涙声の紺野はその腕を振り払って動こうとしない。

「紺野、ここは危ないから!」
「いや!だって、ダイくんがまだそこに……!」


ダメだ。
俺の声は紺野には届かない。
それでも、俺は今、俺ができる事をしなくちゃ。

ポケットから携帯を取り出してボタンを押す。
110だっけ、119だっけ。
混乱して指がうまく動かない。

どっちにかけたのかは覚えてない。
電話口に出たオペレーターに必死に状況を説明する。
何度も「早く警察来てください」と繰り返していた気がする。
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