Dear Hero
「……哲平くん」
おばさんに手招きされて、紺野たちから少し距離を取る。
「大護の容態は?」
「俺たちもまだ何も聞いてないんですけど、顔は血だらけだったし、足は変な方に向いてたから折れてるのかも。運ばれてる時は意識失ってました…」
「そう…。哲平くんも連絡くれてありがとうね」
「いえ……俺、すぐそばにいたのに助けられなくて…すいません…」
「哲平くんが謝る事じゃないわよ。あの子、ちょっとヒーローに憧れてるところあるから…好きな子のために飛び込んじゃったのね」
くすくすと笑うおばさん。
その笑顔を見たら、張り詰めていた気持ちがふっと緩くなって、俺も力が抜けた。
……なぁ大護、お前母親にまで紺野好きな事バレてるんだな。
しばらくして、大護の母親から連絡がいったという紺野の父親が病院に迎えに来た。
大護が「師匠」と呼んでいる人だ。
昔から家族ぐるみの付き合いだったのかな。
「お久しぶりです」と親たちは挨拶し、紺野は病院を後にした。
紺野の父親に「送って行こうか?」と言われたが、断った。
一人になりたい気分だった。
次の日、学校で紺野に会ったけど、まるで夏から突然冬が来たかの如く、萎れたヒマワリのように元気がなかった。
紺野にぴったりだと思っていたオレンジのヘアピンが、一人だけ無理して笑っているように見えた。
大護のおばさんには、「面会できるようになったら連絡するね」と言われていた。
その連絡が来たら紺野にも伝えようと思っていたけど、その前に冬休みに入ってしまった。
それから今日まで、俺も会っていない。
「今度、紺野も連れてくるよ」
「あー………」
「…?」
「ごめん、今は連れてこないで」
「なんで……」
「今は……会いたくない……」
ギプスをしていない右手が、ぎゅっと布団を握ったのが見えた。
きっと、大護には大護の、想いがあるんだろう。
「わかった。会いたくなったら言って。連れてくる」
「……ありがと」
「でもな、大護」
「……?」
「紺野、すげー心配してるからな」
「………」
「何か伝えておく事は?」
「……“心配かけて、ごめん”」
おばさんに手招きされて、紺野たちから少し距離を取る。
「大護の容態は?」
「俺たちもまだ何も聞いてないんですけど、顔は血だらけだったし、足は変な方に向いてたから折れてるのかも。運ばれてる時は意識失ってました…」
「そう…。哲平くんも連絡くれてありがとうね」
「いえ……俺、すぐそばにいたのに助けられなくて…すいません…」
「哲平くんが謝る事じゃないわよ。あの子、ちょっとヒーローに憧れてるところあるから…好きな子のために飛び込んじゃったのね」
くすくすと笑うおばさん。
その笑顔を見たら、張り詰めていた気持ちがふっと緩くなって、俺も力が抜けた。
……なぁ大護、お前母親にまで紺野好きな事バレてるんだな。
しばらくして、大護の母親から連絡がいったという紺野の父親が病院に迎えに来た。
大護が「師匠」と呼んでいる人だ。
昔から家族ぐるみの付き合いだったのかな。
「お久しぶりです」と親たちは挨拶し、紺野は病院を後にした。
紺野の父親に「送って行こうか?」と言われたが、断った。
一人になりたい気分だった。
次の日、学校で紺野に会ったけど、まるで夏から突然冬が来たかの如く、萎れたヒマワリのように元気がなかった。
紺野にぴったりだと思っていたオレンジのヘアピンが、一人だけ無理して笑っているように見えた。
大護のおばさんには、「面会できるようになったら連絡するね」と言われていた。
その連絡が来たら紺野にも伝えようと思っていたけど、その前に冬休みに入ってしまった。
それから今日まで、俺も会っていない。
「今度、紺野も連れてくるよ」
「あー………」
「…?」
「ごめん、今は連れてこないで」
「なんで……」
「今は……会いたくない……」
ギプスをしていない右手が、ぎゅっと布団を握ったのが見えた。
きっと、大護には大護の、想いがあるんだろう。
「わかった。会いたくなったら言って。連れてくる」
「……ありがと」
「でもな、大護」
「……?」
「紺野、すげー心配してるからな」
「………」
「何か伝えておく事は?」
「……“心配かけて、ごめん”」