Dear Hero
入学して早々、女子に囲まれてる孝介を助けたのが始まりだった。


大護と帰ろうと廊下を歩いていると、クラスの女子数名に囲まれていた孝介。

「十和田くん。一緒に帰ろうよ」
「ねねっ番号教えて」
「彼女はいるの?」

噂には聞いていたけど、高校生となると一気に彼氏やら彼女やらの話が舞うんだな。
孝介は最初からイケメン臭が漂っていたから、女子の皆さんの行動は早いなと感心してしまう。
「ちっモテ男め」と大護のぼやきを聞き流しつつそばを通り過ぎると、あからさまに嫌そうな顔してた。
いやもうそりゃ、俺がその女子たちだったら即座に謝って逃げ帰るレベル。


「………」
「…哲ちゃん?」

数歩離れた所で足が止まる。
そのまま足は、元いた場所に戻って孝介の腕を掴んでた。


「十和田!今日一緒に帰ろつってたよな!」
「え……」
「ちょっとなによ、森。今私たちが話してたんだけどー」
「俺らのが先に約束してたんだよ。それとも俺が代わりに残ってやろうか?」
「えー……。森はちょっと彼氏とかには見れないからいいわ…」
「………」


ポンと叩かれた右肩の方を振り向くと、顔を隠して笑いを堪えてる大護。
まじで殴ってやろうかと思った。


「……あぁ、うん。そうだった。悪い」

俺たちに腕を引かれるまま、女子たちから逃げ出した孝介。
そのまま本当に一緒に帰って、色々話をしてみたら意外と気さくで面白いヤツだった。
それで、今でもつるむような仲になった。
おバカ組の俺たちに成績優秀なブレーンが参入した事は、本当に革命だったと思う。


大護曰く、“少女漫画だったら孝介が哲ちゃんへの恋に落ちるパターンの出会い方”だそうだ。



こうして、俺たち二人に孝介が加わって新しい高校生活がスタートした。


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