Dear Hero
「俺、彼女できた」


大護からそんな報告を受けたのは、三日前の事だった。
衝撃的なニュースに、俺は買い替えたばかりの携帯を手から滑り落とし早速キズをつけた。


「……夢なら覚めてるぞ」
「夢じゃねぇし!」
「白土さん?」
「うん」
「あの隣の席の?」
「うん、昨日告られた」
「え、大護は白土の事好きだったの?」
「いや?今は好きじゃないけど、別にそのうち好きになればいいかなって。それでいいって言われたし」
「………なぁ大護」
「ん?」
「紺野は……?」


大護は返事をしなかった。



正直、こんな展開は予想していなかった。
あの事件の後から、大護の口から紺野の名前を聞く事は少なくなっていたし、高校に入ってからは一度も耳にしていなかったけど、それでもまだ大護の中には紺野がいると思ってたから。


「おい、大護」

ヘラヘラ笑う大護の腕を引く。

「どうゆう事だよ」
「どうゆう事って……だって、白土かわいいし、話してて楽しいし。断る理由ないじゃん」
「そうじゃなくて!紺野はどうするつもりなんだよ」
「………」
「もう……好きじゃねぇの?」
「………」
「ほんとにそれで…」
「哲ちゃん」
「…っ」
「ずっと応援してくれてたのに、ごめんな」


眉を下げて笑う大護。
俺は、何も言えなかった。


大護の中に、紺野はもういないんだと悟った。


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