Dear Hero
「うーーーっ」

突然、紺野がうめきながら机に突っ伏する。

「…!?おい、どうした?」
「……」
「……」
「……テツくんがいてよかった」
「……」
「私も……テツくんの事、大事だよ」
「……っ」
「いつも、ありがとうね」

……この爆弾娘。
きっと、俺が思う“大事”とは違うんだってわかってる。
でも、俺の心を丸焦げにしてしまうくらい、嬉しい言葉だった。


「俺はお前の、“友だち”、だからな」
「うん、大事な友だち」

顔を上げた紺野の久しぶりの笑顔。
大護に向けていたものにはまだまだ及ばないけど、俺には眩しすぎるくらいだ。


「……テツくんには好きな子いないの?」
「…んん゛っ!?」
「これだけアツく想ってもらえるなら、テツくんの彼女になる人は幸せだね」


……じゃあ、紺野がなってよ。

なんて。
地球が破滅しても今は言えない。


「どうだろうな。俺、好きな子にはずっと一途だけどね」
「……えっ!?好きな子いるの?」
「いるよ。ずっと片想いしてる」
「うそっどんな子?私も協力する!」
「紺野には言わねー」
「なんでよっ!そりゃテツくんみたいにナイスアシストとかできないかもしれないけどさぁ……」
「言わない」
「……ずるい」
「お前、俺の事より自分の心配してろよな。俺のアシストしたけりゃ、まず自分の事片付けろって」
「じゃあ……私の恋が終わったら教えてくれる?」
「……気持ちよく終われたらな」
「約束、だからね」


右手の小指を差し出される。

「恩返し、させて」
「紺野に務まるかな?」
「がんばっちゃうんだから」



これくらいのアピールなら、許されるよな。



絡み合う小指。
大護も知らない二人だけの約束。
俺に向けられる笑顔。



これがあれば、俺は紺野の“大事な友だち”でいられる—————


< 239 / 323 >

この作品をシェア

pagetop