Dear Hero
紺野と会っている事が孝介にバレたのは、文化祭が終わってしばらくしてからだった。
大護がバイトの日や、孝介が彼女と会う日だったり、鉢合わせないように会っていたのだけど、先に帰ったはずの孝介が忘れ物を取りに戻ってきた時に、ついにエンカウントしてしまった。
いや、大護じゃなかっただけまだよかったのかもしれない。
「あ、孝介。えっと…この子は…」
「D組の紺野飛鳥です。テツくんとは中学の時からのお友達なんです」
「十和田孝介です。……なんで哲平はこそこそしてるの?」
「ちょっと、孝介。こっち…っ」
首に腕を回して紺野から遠ざけると、小声で叫ぶ。
「頼む。紺野に会ってた事、大護には絶対言わないで」
「別にいいけど……大護も紺野さんと知り合いなの?」
「大護とは小学生の時からの付き合い」
「大護に知られちゃまずいの?」
「色々事情があって…今度ちゃんと話すから。一生のお願い」
「一生のお願いは中間テストの時にも聞いた」
「いや、ちょ…ほんと冗談抜きのお願い。まじで」
俺の必死な顔を見て、「わかった」とだけ答えると孝介は教室へ戻って行った。
どっと疲れた。
孝介の事だから約束破る事はないと思うけど、すごく焦った。
紺野に会っている事を知られたくなかったんじゃない。
紺野がこの学校にいる事を知られたくなかった。
俺が知らないだけで、もしかしたら廊下ですれ違ったりしてもう大護も知ってるのかもしれない。
紺野が俺に言ってないだけで、もしかしたらもう二人で会ってるのかもしれない。
俺は、何に必死になっているんだろう—————?
次の日、約束通り孝介は大護には何も言っていなかった。
「ありがとう」と伝えたら、「別にわざわざいう事でもないでしょ」なんて言ってたけど、なんとなく察してくれてたんだと思う。
それから二日後、大護がいない時に事情を説明するまで孝介は黙っていてくれていた。
「要するに、哲平は紺野さんが好きなんだね」
「……っ」
一通り話したところで、涼しい顔して言う。
もちろん、俺はそんなつもりで話してなんかいない。
「俺……そんなにわかりやすい?」
「誰もがわかるって程じゃないけど、俺はそう思った」
「大護も気づくかな…」
「それはない……と思う」
「紺野は……」
「俺は紺野さんはよく知らないよ」
夏前にちょっと調子乗ったのがまずかったかな。
これからはもうちょっと気持ち抑えなきゃ……。
「…あ、孝介。この事は…」
「大護には言わないよ」
「……ありがと」
「ちょっと……意外だった」
「何が?」
「哲平の事、ただの能天気なバカだと思ってた」
「す…ストレートに言いすぎだろ……」
「友だち想いのいい奴なんだな」
「………」
「大護と紺野さんが、ちょっと羨ましいよ」
「……孝介も恋の応援してほしいの?」
「そこじゃない」
自信の恋が走り出して二年。
ようやく俺は、この気持ちの吐き出し口を手に入れた。
大護がバイトの日や、孝介が彼女と会う日だったり、鉢合わせないように会っていたのだけど、先に帰ったはずの孝介が忘れ物を取りに戻ってきた時に、ついにエンカウントしてしまった。
いや、大護じゃなかっただけまだよかったのかもしれない。
「あ、孝介。えっと…この子は…」
「D組の紺野飛鳥です。テツくんとは中学の時からのお友達なんです」
「十和田孝介です。……なんで哲平はこそこそしてるの?」
「ちょっと、孝介。こっち…っ」
首に腕を回して紺野から遠ざけると、小声で叫ぶ。
「頼む。紺野に会ってた事、大護には絶対言わないで」
「別にいいけど……大護も紺野さんと知り合いなの?」
「大護とは小学生の時からの付き合い」
「大護に知られちゃまずいの?」
「色々事情があって…今度ちゃんと話すから。一生のお願い」
「一生のお願いは中間テストの時にも聞いた」
「いや、ちょ…ほんと冗談抜きのお願い。まじで」
俺の必死な顔を見て、「わかった」とだけ答えると孝介は教室へ戻って行った。
どっと疲れた。
孝介の事だから約束破る事はないと思うけど、すごく焦った。
紺野に会っている事を知られたくなかったんじゃない。
紺野がこの学校にいる事を知られたくなかった。
俺が知らないだけで、もしかしたら廊下ですれ違ったりしてもう大護も知ってるのかもしれない。
紺野が俺に言ってないだけで、もしかしたらもう二人で会ってるのかもしれない。
俺は、何に必死になっているんだろう—————?
次の日、約束通り孝介は大護には何も言っていなかった。
「ありがとう」と伝えたら、「別にわざわざいう事でもないでしょ」なんて言ってたけど、なんとなく察してくれてたんだと思う。
それから二日後、大護がいない時に事情を説明するまで孝介は黙っていてくれていた。
「要するに、哲平は紺野さんが好きなんだね」
「……っ」
一通り話したところで、涼しい顔して言う。
もちろん、俺はそんなつもりで話してなんかいない。
「俺……そんなにわかりやすい?」
「誰もがわかるって程じゃないけど、俺はそう思った」
「大護も気づくかな…」
「それはない……と思う」
「紺野は……」
「俺は紺野さんはよく知らないよ」
夏前にちょっと調子乗ったのがまずかったかな。
これからはもうちょっと気持ち抑えなきゃ……。
「…あ、孝介。この事は…」
「大護には言わないよ」
「……ありがと」
「ちょっと……意外だった」
「何が?」
「哲平の事、ただの能天気なバカだと思ってた」
「す…ストレートに言いすぎだろ……」
「友だち想いのいい奴なんだな」
「………」
「大護と紺野さんが、ちょっと羨ましいよ」
「……孝介も恋の応援してほしいの?」
「そこじゃない」
自信の恋が走り出して二年。
ようやく俺は、この気持ちの吐き出し口を手に入れた。