Dear Hero
立ち尽くす紺野を無視して、もう一度自転車に足をかける俺を紺野が掴む。
「……だから、何」
「………」
「ごめんて言えば、また俺がお前を助けるとでも思った?」
「違……っ」
「まだ、俺がお前にがんばれって言うと思った?」
「………っ」
紺野は力いっぱい首を振る。
右手で支えていた自転車を手放すと、紺野の腕を掴み電柱に押し付けた。
痛みで顔をしかめる紺野。
自転車が倒れる音が、乾いた空気に響く。
出会った頃は俺の方が低かった身長。
今では俺が見下ろしている。
尻もちついた俺を軽々と引っ張り上げた柔らかい手。
俺に掴まれた手首は、力を入れているのに振りほどけない。
いつだって笑顔で元気いっぱいだった瞳は、泣き出しそうに歪んでいる。
もう、昔の俺たちじゃない。
重ねてきた時間の中で、少しずつ変わってしまった。
今までと同じなんて、無理だったんだ。
「俺を利用するの、楽しかった?」
「違う…っそうじゃない!」
「お前と大護が幸せになるならって、こそこそと裏で動いて必死になってた俺がバカみたいだ」
「違うの…!テツくん…」
「俺の気持ちを、なんだと思ってんだよ」
「テツくん……っ」
「……これが、最後の応援」
「………っ」
「“がんばれよ”」
俺たちの関係の終わりを察したのか、静かに目を閉じる紺野。
掴んでいた手首を手放すと、道路に倒れた自転車を立て直しサドルに跨る。
紺野は何も言わなかったし、俺も振り返らなかった。
俺の初恋は
想いを告げる事なく
当たる前に自分で粉々に砕け散らかした。
「……だから、何」
「………」
「ごめんて言えば、また俺がお前を助けるとでも思った?」
「違……っ」
「まだ、俺がお前にがんばれって言うと思った?」
「………っ」
紺野は力いっぱい首を振る。
右手で支えていた自転車を手放すと、紺野の腕を掴み電柱に押し付けた。
痛みで顔をしかめる紺野。
自転車が倒れる音が、乾いた空気に響く。
出会った頃は俺の方が低かった身長。
今では俺が見下ろしている。
尻もちついた俺を軽々と引っ張り上げた柔らかい手。
俺に掴まれた手首は、力を入れているのに振りほどけない。
いつだって笑顔で元気いっぱいだった瞳は、泣き出しそうに歪んでいる。
もう、昔の俺たちじゃない。
重ねてきた時間の中で、少しずつ変わってしまった。
今までと同じなんて、無理だったんだ。
「俺を利用するの、楽しかった?」
「違う…っそうじゃない!」
「お前と大護が幸せになるならって、こそこそと裏で動いて必死になってた俺がバカみたいだ」
「違うの…!テツくん…」
「俺の気持ちを、なんだと思ってんだよ」
「テツくん……っ」
「……これが、最後の応援」
「………っ」
「“がんばれよ”」
俺たちの関係の終わりを察したのか、静かに目を閉じる紺野。
掴んでいた手首を手放すと、道路に倒れた自転車を立て直しサドルに跨る。
紺野は何も言わなかったし、俺も振り返らなかった。
俺の初恋は
想いを告げる事なく
当たる前に自分で粉々に砕け散らかした。