Dear Hero
大護の様子が変わり始めたのは、春のオリエンテーション合宿が終わった頃。
「…水嶋って、どんな奴か知ってる?」
孝介に聞いているのを横目で見ていた。
あれだけ周りに興味を持たない大護が、興味を持ったヤツ。しかも女子だ。
同じ学級委員の孝介ならともかく、俺だってまともに話した事はない。
地味な女子だったから大護なんて接点なさそうなヤツなのに。
……合宿で、何かあったのかな?
それからの大護の視線の先には、いつも水嶋がいた。
さり気なさを装ってたみたいだけど、傍から見ればガン見。
本人が気づいていないのが面白かった。
とある日の帰り際、大護が水嶋を追いかけて教室を出て行った。
戻ってきた大護は誤魔化すつもりなのか、胡散臭いウソをついていたから、ちょっとジャブを打ってみた。
「そういえば。さっき、水嶋がここ通ってたんだけど、なんかすっげーニコニコしててさ!俺、あの人が笑ってんの初めて見たわー」
「確かに。水嶋さんにしては珍しい」
「……へー…」
平常心を保っているように見せてたのかもしれないけど、目が泳いでもやもやしたような顔をしていた。
孝介が追い打ちをかける。
「そういえばと言えば。最近、大護はよく水嶋さんを気にかけてるよね」
「…え!」
「確かに!この前どんなヤツ?とか聞いてたし、昨日も黒板消すの手伝ってたよな!」
「そういうわけじゃないけど…」
「でも、助かる。俺、委員会の仕事で結構、学級委員の仕事を水嶋さんに頼んじゃったりしてるし」
「……」
あ、拗ねた。
ヤキモチ焼いたのかな。
無意識なんだろうけど、頬を膨らましている。
「…なに膨れてんの」
「ふくれてない…」
「そんなに頬ぱんぱんにして何を…」
「なに?ヤキモチ?大護、水嶋の事好きなの?」
「…ばっ!ちげーよ!そんなんじゃねーし!」
「「ふーん…」」
ほほーう。なるほど。
「…俺、やっぱ今日帰る」
「あらヤダ。すねちゃった」
「拗ねたな」
「…っ拗ねてねーし!!!」
本人は自覚してないみたいだったけど。
大護が新しい恋を見つけたようだった。
大護は否定していたけど、水嶋の事を見守る眼差しがすべてを物語っている。
俺は知ってる。その優しい眼。
紺野に向けていたそれと、同じものだったから。
「…水嶋って、どんな奴か知ってる?」
孝介に聞いているのを横目で見ていた。
あれだけ周りに興味を持たない大護が、興味を持ったヤツ。しかも女子だ。
同じ学級委員の孝介ならともかく、俺だってまともに話した事はない。
地味な女子だったから大護なんて接点なさそうなヤツなのに。
……合宿で、何かあったのかな?
それからの大護の視線の先には、いつも水嶋がいた。
さり気なさを装ってたみたいだけど、傍から見ればガン見。
本人が気づいていないのが面白かった。
とある日の帰り際、大護が水嶋を追いかけて教室を出て行った。
戻ってきた大護は誤魔化すつもりなのか、胡散臭いウソをついていたから、ちょっとジャブを打ってみた。
「そういえば。さっき、水嶋がここ通ってたんだけど、なんかすっげーニコニコしててさ!俺、あの人が笑ってんの初めて見たわー」
「確かに。水嶋さんにしては珍しい」
「……へー…」
平常心を保っているように見せてたのかもしれないけど、目が泳いでもやもやしたような顔をしていた。
孝介が追い打ちをかける。
「そういえばと言えば。最近、大護はよく水嶋さんを気にかけてるよね」
「…え!」
「確かに!この前どんなヤツ?とか聞いてたし、昨日も黒板消すの手伝ってたよな!」
「そういうわけじゃないけど…」
「でも、助かる。俺、委員会の仕事で結構、学級委員の仕事を水嶋さんに頼んじゃったりしてるし」
「……」
あ、拗ねた。
ヤキモチ焼いたのかな。
無意識なんだろうけど、頬を膨らましている。
「…なに膨れてんの」
「ふくれてない…」
「そんなに頬ぱんぱんにして何を…」
「なに?ヤキモチ?大護、水嶋の事好きなの?」
「…ばっ!ちげーよ!そんなんじゃねーし!」
「「ふーん…」」
ほほーう。なるほど。
「…俺、やっぱ今日帰る」
「あらヤダ。すねちゃった」
「拗ねたな」
「…っ拗ねてねーし!!!」
本人は自覚してないみたいだったけど。
大護が新しい恋を見つけたようだった。
大護は否定していたけど、水嶋の事を見守る眼差しがすべてを物語っている。
俺は知ってる。その優しい眼。
紺野に向けていたそれと、同じものだったから。