Dear Hero
夏休みに入ると、律儀に大護からの市場調査報告メールが届くようになった。
今日はどこ行った、こんな店だった、野郎でも行けそうだから今度三人で行こうとか、そんな内容だけど。
完全に惚気メールだったから、しばらくするとちょっと飽きていたというのは秘密だ。
いつものように携帯が震える音が部屋に鳴り響く。
今日は、文化祭実行委員の打合せだとか言ってたから、大護がその事で電話掛けてきたんだろうなと思って、ディスプレイの名前を確認しないまま応答ボタンを押した。
「今度はなんですか?」
「あっ……あの…えっと……」
「……っ」
スピーカーから聞こえてきたのは、久しぶりの声。
慌てて携帯を耳から離してディスプレイを見ると、“紺野飛鳥”の文字。
思わずとってしまった……!
しかし、とってしまったものは仕方がない。
切るわけにもいかないから、そのまま続ける。
「……悪い、間違えた。なんかあった?」
「あの…急にごめんね。……出てくれないかと思った…」
「いや……そりゃ出るよ…」
正直、出る前にディスプレイを見ていたら、とるのを躊躇っていたと思うけど。
「……なんか、久しぶりだね」
「おう……」
半年ぶりの紺野の声。
耳元がじんわりと温かくなる。
「今日、少し時間ある…?」
「別に…何もないから暇だけど」
「ちょっと、会えるかな……」
待ち合わせのファストフード店に、紺野は制服でやってきた。
「……おっす」
「久しぶりだね」
「それ、さっきも電話で聞いた」
「そうだった」
控えめに笑う紺野。
元気そうなポニーテールとミスマッチだった。
「なんで制服なの?」
「………文化祭の実行委員の集まりがあったの…」
「…ふーん。………っは!?」
飲んでいたコーラを噴き出しそうになった。
その言葉だけで、紺野が言いたい事がわかってしまった。
「……大護に会っちゃったんだ…」
「会っちゃったんだよおぉぉ……」
頭を抱えるようにテーブルに突っ伏する紺野。
まさかこんな形で遭遇してしまうとは……。
思いがけない展開に、俺も言葉を失った。
「で、どうしたの?」
「びっくりして思わず声かけちゃった……」
「喋ったんだ……」
「喋ってしまった……。めちゃくちゃテンパっちゃってさぁ、何話したのか覚えてないの!私、変な事言ってないかなぁ……」
「大護はどうしてたの?」
「……ちょっと気まずそうな顔してたけど、普通に話してくれた…」
「ならよかったじゃん。シカトされるよりかは」
「そんな事されてたら、私もっとボロボロになってる……」
突っ伏したままめそめそ泣き言を言う紺野に、思わず噴き出してしまう。
「……笑わないでよ」なんて文句を言うけれど、知ったこっちゃない。
それよりも、昔と変わらない会話ができている事が不思議だった。
今日はどこ行った、こんな店だった、野郎でも行けそうだから今度三人で行こうとか、そんな内容だけど。
完全に惚気メールだったから、しばらくするとちょっと飽きていたというのは秘密だ。
いつものように携帯が震える音が部屋に鳴り響く。
今日は、文化祭実行委員の打合せだとか言ってたから、大護がその事で電話掛けてきたんだろうなと思って、ディスプレイの名前を確認しないまま応答ボタンを押した。
「今度はなんですか?」
「あっ……あの…えっと……」
「……っ」
スピーカーから聞こえてきたのは、久しぶりの声。
慌てて携帯を耳から離してディスプレイを見ると、“紺野飛鳥”の文字。
思わずとってしまった……!
しかし、とってしまったものは仕方がない。
切るわけにもいかないから、そのまま続ける。
「……悪い、間違えた。なんかあった?」
「あの…急にごめんね。……出てくれないかと思った…」
「いや……そりゃ出るよ…」
正直、出る前にディスプレイを見ていたら、とるのを躊躇っていたと思うけど。
「……なんか、久しぶりだね」
「おう……」
半年ぶりの紺野の声。
耳元がじんわりと温かくなる。
「今日、少し時間ある…?」
「別に…何もないから暇だけど」
「ちょっと、会えるかな……」
待ち合わせのファストフード店に、紺野は制服でやってきた。
「……おっす」
「久しぶりだね」
「それ、さっきも電話で聞いた」
「そうだった」
控えめに笑う紺野。
元気そうなポニーテールとミスマッチだった。
「なんで制服なの?」
「………文化祭の実行委員の集まりがあったの…」
「…ふーん。………っは!?」
飲んでいたコーラを噴き出しそうになった。
その言葉だけで、紺野が言いたい事がわかってしまった。
「……大護に会っちゃったんだ…」
「会っちゃったんだよおぉぉ……」
頭を抱えるようにテーブルに突っ伏する紺野。
まさかこんな形で遭遇してしまうとは……。
思いがけない展開に、俺も言葉を失った。
「で、どうしたの?」
「びっくりして思わず声かけちゃった……」
「喋ったんだ……」
「喋ってしまった……。めちゃくちゃテンパっちゃってさぁ、何話したのか覚えてないの!私、変な事言ってないかなぁ……」
「大護はどうしてたの?」
「……ちょっと気まずそうな顔してたけど、普通に話してくれた…」
「ならよかったじゃん。シカトされるよりかは」
「そんな事されてたら、私もっとボロボロになってる……」
突っ伏したままめそめそ泣き言を言う紺野に、思わず噴き出してしまう。
「……笑わないでよ」なんて文句を言うけれど、知ったこっちゃない。
それよりも、昔と変わらない会話ができている事が不思議だった。