Dear Hero
「そういえば、テツくんのクラスは文化祭当日はどうなるの?」
「模擬店だから、当番制。大護が当番表作ってる」
「ダイくんが!?あの頭の弱いダイくんが…そんな事できるの…?」
「俺も正直めっちゃビビったわ。相当苦労してるけど、それっぽい物できてるみたい」
「………」
「実行委員、めちゃがんばってるよ」
「………テツくん」
「なに」
「お願いが……」
「わかってるよ」
「…!」
「大護の休憩時間教えろとかだろ?」
「……っありがとう!」

俺の左手を取りぎゅっと握ると、とびきりの笑顔を咲かせる。

あぁ、ヒマワリが久しぶりに咲いた。
やっぱり、太陽がないとヒマワリは咲かないんだな。


大護の事だから、水嶋と休憩時間合わせようとしてるんじゃないかなと思ったけど、それは言えなかった。

握られたままの手を見てはっと振りほどく。
気にも留めていない紺野。


左手が、じんじんと熱い。

これだけ長い時間一緒にいるのに、紺野に触れるのはまだ慣れない。
俺は全然大人じゃないよ。
今日はこの左手、洗わないでおこうと思ってるぐらいだ。

それに比べて、俺に触れても紺野は普段と何一つ変わらない。
俺は、異性として意識すらされてないんだろうな。


そんな相手に「好きだ」なんて、今は言えないだろ。



だけど。
夕陽に向かって歩きながら「テツくん早く!」と笑う紺野を見ていたら、この関係がもうすぐ終わってしまうような気がしてならなかった。




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