Dear Hero
教室の時計が14時を指す。
さっきから、教室の外にいる紺野がチラチラと目に入ってくるんだよなぁ。

「大護、休憩14時からだろ?行って来いよ」
「いや、別に誰かと約束してるわけじゃないし、こっち大変そうだからいいよ」
「明日の方が混むからきっと回れねぇって。こっちは大丈夫だから行って来いって」
「でも……」
「俺がいなくても行けるでしょ!行ってらっしゃい!」
「母ちゃんかよ。……じゃあ、行ってくる。ありがと」


小さく微笑むと、調理場を離れて教室の隅の荷物置き場へ向かう大護。
その姿を見つけたのか、廊下から窓に手をかけ声を掛ける紺野。

何を話しているかは聞こえないけど、ニコニコと楽しそうな紺野と困ったように笑う大護。
二人が並ぶ姿を見るのは、あの事件の日以来だった。

財布を持って大護は紺野についていく。



きっと、紺野は想いを告げるんだろうな。


お膳立てはした。
あとは紺野次第。


その想いは実らない。
そう思っているのに、心臓が潰されてしまいそうに苦しかった。




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