Dear Hero
「……なんか、テツくんが優しい」
「そりゃ……好きな子にはな」
「今までこんな事、した事ないのに」
「だって、友だちだっただろ。好きな子は特別」
「……急に変わらなくても」
「紺野だって、こんな反応した事なかったじゃん」
「………っ」

紅く染まる頬を隠すように、両手で顔を覆う。
大護の前でも見た事ない、初めての姿。
ちょっと、胸がくすぐったくなる。

そんなリアクションされちゃったら。
俺は単純だから、自惚れちゃうんだよ。


俺を視界から追い出すかの如く下を向く、紺野の顔を覗き込む。

「……っ」
「あのさ、勘違いするとすっげぇ恥ずかしいから聞いちゃうけど」
「………」
「それ、もしかしてちょっと俺の事意識してる?」
「………っ!」


ばっと俺を見上げて、口をぱくぱくしながら「違…っ」なんて否定するけど、全然説得力がない。
それが面白くて、思わず噴き出してしまう。

「ちょっと…笑わないでよ」
「いや……ごめん、笑ってない……」
「笑ってるじゃない!」


いいじゃんか。
ずーっと気持ち抑えてきたんだから。
今まで俺の事なんてちっとも意識してなかった紺野が、俺の事考えて紅くなったりワタワタしたり、おかしくなっちゃったり。

紺野が俺を意識している。
たったそれだけで嬉しくて舞い上がっちゃう事くらい、許してくれてもいいんじゃないかな。


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