Dear Hero
「…っしょうがないでしょ!誰かに好きになってもらうなんて、初めてなんだから」
「中学ん時、告られてたじゃん。サッカー部のヤツに」
「あれ、そういえば…。ダイくんに夢中だったから忘れてた……」
「ひっでぇ」

ケタケタ笑う俺の腕を、悔しそうにバシンと叩く。
ちょっとだけ、いつもの姿に戻ったのも嬉しくて顔がほころんでしまう。
叩かれて嬉しくなるなんて、Mだと言われてしまいそうだけど。


「……だいたい、私の何がいいのよ」
「全部」
「なにそれ…嘘くさい!」
「ウソじゃねぇって。なんなら紺野の好きなところ、一個ずつ言おうか?一日じゃ足りねぇけど」
「い…っいい!言わなくていいから!」
「まず、いつも笑ってるところ。元気になれるから紺野の笑顔、好き」
「………っ」
「それから、がんばり屋なところ。変な方向く事もあるけど、いつもまっすぐで尊敬する」
「ごめん、恥ずかしいからもういい………」
「あとな、人当たりがいいところ。初対面から仲良くなれるのすげぇって思って、高校あがった時には参考にしてた」
「もう……いいってば……」
「まだあるぞ?すぐ手が出るとことか食い意地張ってるとことか、意地っ張りなとことか、人の都合もお構いなしで強引なとことか……」
「ちょ…待って。それ好きなところじゃなくて悪口だよね?」
「好きなところだよ」
「………っ」
「そうゆうところも含めて、紺野が好き」
「わかった!わかったからもう言わないで!」
「もっとあるんだって。あとは、優し…ふがっ」


まだまだ言い足りない紺野の魅力を紡ぎ出す口を、柔らかな手が塞ぐ。

俺のファーストキスが、掌に奪われた。


「お願いだから……もう言わないで……」
「………」
「ほんとに、私、そういうの慣れてないから……キャパオーバーしてるの」
「………」
「嬉しいんだからね。こんな事言われた事ないから、すごく嬉しい。けど、今、頭も胸もいっぱいだから、少し考えさせて……」
「………」
「ちゃんと……答え出すから。少し時間をください」


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