Dear Hero
俺の母にとっての姉は、血の繋がらない連れ子。
さらにその子供である依も、血の繋がらない孫。
度々実家に依を預けていく事を、あまり快く思っていない事はわかってたんだ。
それなのに、突然、何も言わず、依を置いていなくなって。
始めのうちは目立たなかったものの、依への当たりは日に日にきつくなっていった。
1週間…2週間……1ヶ月………
2ヶ月を過ぎる頃には、母は依を拒絶するようになり、ただ衣食住を提供する側とされる側という関係になっていた。
あれだけよく喋り、よく笑っていた時の姿はどこにもなく、黙って感情もなく淡々と一日を過ごすだけの機械のように、わがまま一つ言う事のなかった依。
俺にとっての依は、姪というより歳の離れた妹みたいで。
まぁ…今はちょっと親心みたいなのもあるんだけど。
機械のようになっても、俺と話す時だけは昔みたいに笑っていてくれる事が、せめてもの救いだった。
小さいながらも、この生活が望まれたものではないと感じていた依は、せめて自分でもできる事を、と積極的に母の家事を手伝っていたらしい。
俺は何もできずに、ただ、依の話相手になる事しかできなかったけれど…。
そんな首の皮一枚で繋がっていたような生活は、母の言葉で終わりを迎える。
その日、母は体調を崩し寝込んでいた。
今思えば、母も様々なストレスを抱えていたんだと思う。
そんな母を見て、依は看病しようと思ったんだろうね。まだ自分が受け入れてもらえていた時に、そうしてもらったように。
家事を手伝う中で覚えたのだろうか。
でも、小1の依が見よう見真似で作った初めてのおかゆは、それはもう食べれたものではなくて。
『…おばちゃん。おかゆたべてはやくよくなってね』
『ありがと。でも今は食欲ないから後で食べるわ』
『でも、たべなきゃげんきになれないよ…?』
『……っうるさいわね!誰のせいだと思ってんのよ!!』
堪え切れず、ベッドから起き上がり感情を爆発させた母が投げつけた茶碗は、壁にぶつかって割れると中身を撒き散らした。
水分はどんどんカーペットに染み込み、床には生の米粒だけが残る。
『あんたの母親は私の子供じゃないし、あんたは私の孫でもないの!これ以上私を頼らないで!迷惑をかけないでよ!!』
大学から帰宅すると、ベッドで泣き叫んでいる母と、自分の部屋で涙も流さず小さく座っている依がいた。
あぁそうだ。あの母親がいなくなった日から、俺は依の涙を見ていない。
父と話し合った結果、これ以上母と依は一緒に暮らせないという事になった。
“パパとママは一緒にいる”という事になっている以上、依の父親に引き取ってもらうわけにはいかない。
ならば、残された道は一つしかないと思ったんだ。
さらにその子供である依も、血の繋がらない孫。
度々実家に依を預けていく事を、あまり快く思っていない事はわかってたんだ。
それなのに、突然、何も言わず、依を置いていなくなって。
始めのうちは目立たなかったものの、依への当たりは日に日にきつくなっていった。
1週間…2週間……1ヶ月………
2ヶ月を過ぎる頃には、母は依を拒絶するようになり、ただ衣食住を提供する側とされる側という関係になっていた。
あれだけよく喋り、よく笑っていた時の姿はどこにもなく、黙って感情もなく淡々と一日を過ごすだけの機械のように、わがまま一つ言う事のなかった依。
俺にとっての依は、姪というより歳の離れた妹みたいで。
まぁ…今はちょっと親心みたいなのもあるんだけど。
機械のようになっても、俺と話す時だけは昔みたいに笑っていてくれる事が、せめてもの救いだった。
小さいながらも、この生活が望まれたものではないと感じていた依は、せめて自分でもできる事を、と積極的に母の家事を手伝っていたらしい。
俺は何もできずに、ただ、依の話相手になる事しかできなかったけれど…。
そんな首の皮一枚で繋がっていたような生活は、母の言葉で終わりを迎える。
その日、母は体調を崩し寝込んでいた。
今思えば、母も様々なストレスを抱えていたんだと思う。
そんな母を見て、依は看病しようと思ったんだろうね。まだ自分が受け入れてもらえていた時に、そうしてもらったように。
家事を手伝う中で覚えたのだろうか。
でも、小1の依が見よう見真似で作った初めてのおかゆは、それはもう食べれたものではなくて。
『…おばちゃん。おかゆたべてはやくよくなってね』
『ありがと。でも今は食欲ないから後で食べるわ』
『でも、たべなきゃげんきになれないよ…?』
『……っうるさいわね!誰のせいだと思ってんのよ!!』
堪え切れず、ベッドから起き上がり感情を爆発させた母が投げつけた茶碗は、壁にぶつかって割れると中身を撒き散らした。
水分はどんどんカーペットに染み込み、床には生の米粒だけが残る。
『あんたの母親は私の子供じゃないし、あんたは私の孫でもないの!これ以上私を頼らないで!迷惑をかけないでよ!!』
大学から帰宅すると、ベッドで泣き叫んでいる母と、自分の部屋で涙も流さず小さく座っている依がいた。
あぁそうだ。あの母親がいなくなった日から、俺は依の涙を見ていない。
父と話し合った結果、これ以上母と依は一緒に暮らせないという事になった。
“パパとママは一緒にいる”という事になっている以上、依の父親に引き取ってもらうわけにはいかない。
ならば、残された道は一つしかないと思ったんだ。