Dear Hero
そして、その4日後には母さんと樹さんは揃って学校に出向き、事情を報告に行ったらしい。
俺と同じく、一つ屋根の下で同年代の異性がいる中で暮らすのはどうなのかとこぼす学校側に、「うちの娘が見張ってますから」と、同じ学校の卒業生である姉ちゃんの名前を出すとみな揃って納得し、この話はごく身近な人の間で留めるように、との条件を受け、承諾されたそうだ。
当時いったい何をしたというのだ、姉よ。


とんとん拍子に話は進み、こうして水嶋の家から生活用品を運び出しに来ているのである。
姉ちゃんが車を出してくれたが、運び出した荷物は、学校鞄と制服を除き、大きめの旅行鞄と小さな段ボールがそれぞれ一つだけだった。
生活に必要なものの多くは、水嶋引き抜き大成功に大喜びした母さんと姉ちゃんが水嶋を引き連れて買い物して回り、一通り揃っていたから。

「娘が増えたみたいで嬉しいわ」と鼻唄を唄いながら新しい茶碗と箸を戸棚にしまう母さん。
「こんな妹欲しかったの!」と早速部屋に連れ込んで、水嶋の改良に勤しむ姉ちゃん。


「お前も娘で妹なのにな」
「家事手伝ってピンクのふわふわな服着るのが娘で妹ならごめんだね」
「そんな妹で、兄ちゃんは気が楽だよ」


3人の買い物中、留守番をしていた俺と颯希は、リビングが騒々しくなる中でも武将が敵をバタバタなぎ倒していくゲームに必死だった。
昔から姉ちゃんよりも俺と遊ぶ事の方が多かった颯希は、いい意味で女らしくなくサバサバしている。
ゲームや映画の趣味も合うので今でもよく遊ぶけど、最近はいつの間にか颯希のゲームの腕が上がっていて、兄ちゃんは圧されっぱなしでちょっと焦っている。
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