Dear Hero
***


「……つらい、しにたい、たえられ ない」
「最後、文字数オーバー」
「孝介さん、真顔でダメ出しすんのやめて…」


同居、2日目。
学校からOKが出た時点で、水嶋の了解を得て哲ちゃんと孝介には説明していた。
この二人なら“ごく身近な人”に当てはまるはず。
むしろ、二人に隠し事をしたまま過ごせる自信なんてない。


「大護、そのおもしろそうなエロゲのタイトル教えて」
「勘弁して。これがエロゲなら俺はもっと自慢してる」
「大護童貞だもんね」
「違ぇよ。去年卒業してる」
「え?ウソ…マジで…?」
「あ、ごめん、恥ずすぎて哲ちゃんには言ってなかった」

あったわ。隠し事。

「お前…抜けがけすんなよ…」
「ちょっと。そういう話は教室ではもっとトーン落としてくれる?あと、エロゲは高校卒業してから」

休み時間の度に机に突っ伏しては泣き言を漏らす俺に、3限目を終えた頃には孝介はもう飽きたようだった。


…昨日は、あのタイミングで姉ちゃんが入ってきたからなんとか止まったけど、次もし同じような事があっても、自分で止められる自信はない。
もしかしたら、水嶋を傷つけてしまうかもしれない。

怖い。大事にしたい。
なのに、もっと触れたいと思ってしまう。


「いいよなぁ、彼女がいていつでも何の気兼ねも遠慮もなくイチャイチャできる奴はよぉ」
「別にいつでも好きなようにできる訳じゃないよ。合意の上でしかしない」
「ほんとに?」
「…たまに、勝手にするけど…」
「ほら見ろ!でもいいじゃんか!怒られるわけじゃないんだし」
「そんなに言うんだったら、さっさと告白して付き合えばいいのに」
「いや、告白とかそういう事じゃなくて……て、え?なんで?俺言ったっけ?」
「え?水嶋の事好きなんでしょ?」
「これで好きじゃないなんて言われたら、ちょっと大護の事が理解できない」
「え、ウソ…なんでわかんの…」
「え、むしろなんでバレてないと思ったの?」


まじか。
自覚がなかっただけにくっそ恥ずかしいんだけど。
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