Dear Hero
思い返してみると、俺は水嶋の気持ちを考えた事がなかった気がする。
触れるのも、抱きしめるのも、キスしようとしたのも。
俺がしたいから、した。それだけだった。

だんだん傍にいる事が普通になって、当たり前のように笑顔を向けられて、水嶋の家でキスしそうになった時も、抵抗も何もされなかった。

だからこそ、今回の急激な変化に俺の頭がついていかない。
こんな事、初めてだから急に不安になる。


悪意は持たれていないとは思っていたけど、水嶋の事だ。
俺の言動を邪険にできず無理やり付き合っていたのかもしれない。
あぁ、そうだ。きっとそうだったんだ。
極めつけに昨日のアレだ。いい加減、嫌になったんだろうな。

だからと言って、ずっとこんなのは嫌だ。
“何となく傍にいる“は終わりにしよう。
振られたらそれはそれで気持ちを切り替えたらいい。



俺は決めた。
文化祭の最終日に、水嶋に気持ちを伝えるんだ、と—————



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