Dear Hero
秘めた想い
雲一つない青い空。
風が心地よい気温。
絶好の秋晴れで文化祭初日が幕を開けた。

我が高校の文化祭は2日間。
初日となる金曜日は校内のみの開催となり、2日目の土曜日は一般開放され、保護者や他校の生徒たちもやってくる。


俺たちのクラスはと言うと……

装飾班による、グリーンを基調とした装飾は教室とは思えないナチュラルコーディネート。
メインメニューのパンケーキの仕込みも終わったし、選べるトッピングもセットした。
小さめの黒板にかわいいイラストと共にチョークで書かれたメニュー看板は入り口前に設置。
注文を受けるところから調理、提供、接客の段取りもクラスのみんなで何度も練習した。
そして、衣装班が全員分作ってくれた女子用の短めの白いカフェエプロンと、男子用の長めの黒いギャルソンエプロン、最後に全員お揃いのグリーンのスカーフを身に着け、準備は完了だ。


「そいじゃあ…お客さんも俺たちも、みんなが楽しめる文化祭にしよう!やるぞ!!」
「「おおおおおっ!!!」」


気合いの掛け声がかかると、みんなもボルテージが上がりそれに応える。
ちなみに、掛け声役は「盛り上げ隊長と言えば、森」という満場一致の理由で哲ちゃんに任命された。
実行委員の俺の立場とはいったい……


とはいえ、俺だって何もしなかったわけじゃない。
俺の一番の功績は、当番表だ。
誰がいつから店番に入って休憩をとるのか。
部活や委員会で出し物がある人を配置し直してみたり、約束通り運動部の人たちはちょっと長めに店番に入れてみたり、せっかくキレイにはまった当番表も「ごめん、部活の当番とかぶっちゃって…」なんてのが続出して何度も作り直したりと、いくつもの紙ごみの山を作りながら昨日の夜にようやく完成した。
制作者の特権として、俺の休憩時間を水嶋のとこっそり合わせておいたのは、みんなには秘密だ。
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