Dear Hero
「紺野のクラスは何やってんの?」
「展示。だから準備は大変だったけど当日は暇なんだよ」
「なるほど。かしこいな」
「てゆうか隣のクラスでしょ。少しは気にしてよね」

プンプンという擬音語が聞こえてきそうなほどに、頬を膨らまして拗ねたように怒ると、すぐに「ダイくんだもんね、興味ないか」といじわるそうに笑う。
なんだか、この笑顔を追いかけていた頃を思い出して懐かしくなった。


ずっと動きっぱなして腹が減っていたので、何かを食べようと探していると唐揚げを売っている模擬店を見つけたので、そこで5個セットの唐揚げを買った。
500円。ぼったくりもいいとこだよな、と思ったけど、うちのクラスも同じような価格設定だったなと思い出す。
これが文化祭クオリティ。

さぁ食べようとしたところで、携帯が鳴る。
調理班の奴からだ。

[やばい、材料切れそう]

「ごめん、ちょっと持ってて。食べてもいいよ」と紺野に唐揚げを渡し、メールの返信を打つ。

[牛乳と卵は家庭科室の冷蔵庫。粉は調理台の後ろの段ボールの中]
[段ボールが見つからない]
[クロスかかってる]
[あった!]

完結したと思って携帯をパチンと閉じると、またも携帯が震える。

[紙皿がない]
[同じ段ボールの中]
[あった!]

携帯を閉じて紺野から唐揚げを受け取ろうとしたところでまた震える。

「だあああくそっ!俺休憩時間だっつーの!」
「あっはっは。頼りにされてるねぇ」
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