Dear Hero
「あ、お化け屋敷」
3年生の校舎にやってきたところで、とあるクラスの展示物を見つける。
「迷路になってるんだって。これ行かね?」
「………」
「…あ、こうゆうのダメだっけ?」
「う、ううん!大丈夫…!」
「めちゃ顔硬いけど…」
「いいの!行こ!」
俺を引っ張り先を進む紺野だったが……
「きゃああああ!!」
脅かそうとあの手この手を使って出てくるお化け役たちに、全力の悲鳴を上げる。
これだけのリアクションしてくれるなら、お化け役だって喜ぶだろう。
「普通に人じゃん。お前ならこんなの簡単にぶっ飛ばせるだろ」
「お化けは別だよ!」
入る頃には、シャツの袖をそっとつかまれているだけの距離だったのが、奥まで進んでいるうちに少しずつ近くなっているような気がした。
それまでロウソク(っぽい照明)や、窓にかかったカーテンから差し込む外の明かりでほんのり明るかった迷路の中が、ある区画に入ると急に光がなくなり、真っ暗になった。
隣にいる紺野の姿も見えず、気配を感じるだけだ。
「何も見えない…」と不安そうな声が聞こえたと思うと、そっと腕に温かさを感じた。
「ごめん…ここの間だけ、腕貸して…」
昔から、同学年の誰よりも強くて、怖いものなんてないんだろうなと思っていた。
そんな紺野が、暗闇の中でお化けに怯えながら震えている。
俺の腕に触れる手があまりにも冷たくて、なんだかかわいいなと思ってしまう。
角を曲がり、“出口はこちら”と書かれたボードが、ぼやけた明りに浮かび上がるのを見つけた瞬間、叫びながら血まみれの髪の長い女がライトアップされながら飛び出してきて、紺野は今日一番の悲鳴を上げながら俺の腕に抱きついた。
突然出てきたお化けよりも、お化けが叫んだ言葉の内容よりも、俺は違うところに驚いて固まっていた。
腕に当たる、柔らかい感触。
触れちゃいけないものに触れた気がする。
3年生の校舎にやってきたところで、とあるクラスの展示物を見つける。
「迷路になってるんだって。これ行かね?」
「………」
「…あ、こうゆうのダメだっけ?」
「う、ううん!大丈夫…!」
「めちゃ顔硬いけど…」
「いいの!行こ!」
俺を引っ張り先を進む紺野だったが……
「きゃああああ!!」
脅かそうとあの手この手を使って出てくるお化け役たちに、全力の悲鳴を上げる。
これだけのリアクションしてくれるなら、お化け役だって喜ぶだろう。
「普通に人じゃん。お前ならこんなの簡単にぶっ飛ばせるだろ」
「お化けは別だよ!」
入る頃には、シャツの袖をそっとつかまれているだけの距離だったのが、奥まで進んでいるうちに少しずつ近くなっているような気がした。
それまでロウソク(っぽい照明)や、窓にかかったカーテンから差し込む外の明かりでほんのり明るかった迷路の中が、ある区画に入ると急に光がなくなり、真っ暗になった。
隣にいる紺野の姿も見えず、気配を感じるだけだ。
「何も見えない…」と不安そうな声が聞こえたと思うと、そっと腕に温かさを感じた。
「ごめん…ここの間だけ、腕貸して…」
昔から、同学年の誰よりも強くて、怖いものなんてないんだろうなと思っていた。
そんな紺野が、暗闇の中でお化けに怯えながら震えている。
俺の腕に触れる手があまりにも冷たくて、なんだかかわいいなと思ってしまう。
角を曲がり、“出口はこちら”と書かれたボードが、ぼやけた明りに浮かび上がるのを見つけた瞬間、叫びながら血まみれの髪の長い女がライトアップされながら飛び出してきて、紺野は今日一番の悲鳴を上げながら俺の腕に抱きついた。
突然出てきたお化けよりも、お化けが叫んだ言葉の内容よりも、俺は違うところに驚いて固まっていた。
腕に当たる、柔らかい感触。
触れちゃいけないものに触れた気がする。