秋の月は日々戯れに
出会いはとある秋の終わり

コンビニで夕飯を調達した帰り、近道しようと横切った公園は、不気味な静けさに満ちていた。

闇に沈んだ遊具がその不気味さに拍車をかけ、園内に一つだけ灯った外灯が、その下にあるベンチだけを明るく照らし出し、その周りの闇を更に深める。

そんな場所に、彼女はいた。

人気のないその場所で、たった一人、ブランコに腰掛けて空を見上げていた。

闇にぼんやりと浮かび上がる白いワンピースは、足元に近づくにつれて、夜の闇に溶け込むように色を失っていき、そこからスラリと伸びた足は、既に向こう側が透けてしまっている。

反対に上半身はしっかりと色を保っているけれど、フリルがかった袖口から伸びる腕は、着ているワンピースと同じくらい白い。

年下のようにも、年上のようにも見える、年齢が判別しづらい横顔は、雲間に瞬く星を真っ直ぐに見上げている。

その口元には柔らかい笑みが浮かんでいて、それが彼には、なんだかとても幸せそうに見えた。


「こういう時、普通は殿方の方から“お一人ですか”と声をかけるものですよ。わたしは、ずっと待っていました」


唐突なセリフと共に、笑みを湛えたままゆっくりと下りてきた視線が、立ち尽くす彼の姿を捉える。


「ロマンスの始まりは男性から、というのが理想的ですが、理想と現実はいつだって相容れないものですからね、仕方がありません。そこに拘りすぎていては、始まるものも始まりませんから」
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