秋の月は日々戯れに
彼女は別段嫌な顔もせず、ただ労わるようににっこりと微笑んで彼を見つめている。
「全然……」
ポツリと呟いた声に、彼女が笑顔のままで首を傾げる。
「……全然、大丈夫じゃないですよね。それって、俺はただ幽霊にとり憑かれてるってことですから」
”わたしがついてる”とは、すなわちそういうことだろう。
けれど彼女は、先程までの微笑みをスッとしまいこんで、反対に鋭い視線でもって彼を睨みつけた。
「今すっごくいい雰囲気だったのに、どうしてあなたはそういうムードのないことを言うんですか!この場合は、わたしがいつでもおそばにいますよって意味に決まっているでしょ!!」
「とり憑いてるって、言い方変えればいつでもそばにいるぞって事になりますよね」
「それとこれとは話が違います!!」
プンスカ怒る彼女だったが「もういいです!とっととお風呂に入ってきてください。その間に、夕飯を温めておきます」と背中で怒りを表しながらキッチンへと向かう。