秋の月は日々戯れに
「……普通、一人暮らしでこんなでかい皿使う機会なんてないんですよ」
「友達を大勢呼んでパーティーとか」
「するようなタイプに見えますか?」
ふてくされ気味に返した彼に、彼女は意味ありげに笑ってみせる。
「今まではそうだったかもしれませんが、これからはどうだか分かりませんよ」
また適当な事を――と思いながら、彼は箸を取って手を合わせ、煮崩れてだいぶ不格好なじゃがいもを口に入れた。
やはり今日も、特別不味くはないがかと言って美味しくもない微妙な出来栄え。
特に感想もなく黙々と箸を進める彼を、彼女はにこにこと笑って見つめる。
当然、そんな彼女の前には、白いご飯も味噌汁も準備されてはいない。
「せっかくコツを掴んだんですから、その勢いでご飯も食べられるようにならないんですか」
何気なく放ったセリフに、彼女の顔が途端にぱあっと華やいだ。
「それはあれですか!一人で食べるのはどうにも味気ないから、わたしにも一緒に食べて欲しいということですか!」
「いや……何人で食べても、あなたの料理は味気ないです」
「どう言う意味ですか!」