秋の月は日々戯れに
「ご飯のおかわり、いりますか?」
視線を落としてしばらく悩んだ彼は、茶碗を掴んでずいっと彼女の方に突き出す。
「さっきより少なめでお願いします」
「はい」と笑顔で立ち上がった彼女の背中に「味噌汁のおかわりはないんですか?」と問いかける。
「味噌汁はインスタントでいいと言ったのはどこの誰ですか」
振り向きざまに凄まれた。
「インスタントは便利ですが、摂りすぎはよくありません。ですから、あなたがインスタントの味噌汁を好まれる限り、味噌汁は一日一杯までと決めました」
「一日一杯って……インスタントの味噌汁飲みすぎたくらいでそんな」
「あなたのそういう慢心が、健康を害する事へと繋がるのです!わたしが嫁いできたからには、インスタントに頼り切った生活は許しません」
冷凍食品は文明の利器だと騒ぐ彼女だが、なぜだかインスタントにはやたらと厳しい。
特に味噌汁は、未だスーパーに行くたびに味噌をねだられ、それを突っぱねてインスタントを買って帰るのが最早恒例となっていた。