秋の月は日々戯れに


「今朝のメニュー、焼いた鮭と白ご飯の隣に、なぜかコンソメスープがあったのはそういうわけですか」

「今晩のおかずは肉じゃがにしようと朝から決めていましたから。味噌汁も、その時に出そうと思っていたので」


焼き鮭と白ご飯とくれば、当然味噌汁が飲みたくなるシチュエーションで、あえてコンソメスープを出してくるところに、彼女の意地の悪さを感じずにはいられない。

おかわりを盛った茶碗を手に戻ってきた彼女は、それを彼に手渡しながらにっこり笑った。


「明日の朝は、今朝の残ったコンソメスープにトマトを入れて、トマトスープにしようと思っています。おかずは納豆で」


やはり彼女は意地が悪い。

けれど、ここで負けてはダメだと無視して肉じゃがを頬張って、白いご飯を口に入れて、反射的に味噌汁の碗に手を伸ばしたところで、彼はしばらく固まった。

視界の端で、彼女がにっこり笑っている。


「……分かりましたよ。味噌、買ってくればいいんでしょ」


その瞬間彼女は、ついに訪れた勝利に大変満足そうに頷いた。
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